第41話 呼び出し (改)
神殿に辿り着き、礼拝堂というか、祭壇のあるホールを訪れ、女神様の像にお礼と、今度是非直接お礼を言いたいです……と祈る。
まあ、何も変化は起こらなかった。
そして、ガバスさんが司祭様を捕まえて来た。
「お久しぶりです。何か、私にご用とか?」
と挨拶をすると、凄い勢いで頭を下げられ、ビックリ。
聞けば、後で寄付金の小袋を開けて、卒倒したらしい。
「あれは何かの間違いでは無いのでしょうか?」
と言われた。
「ああ、間違いは無いですよ。
それに、孤児院はこの街だけではないのでしょ?
送金する手段があるかは知りませんが、また足り無くなった頃に、寄付するつもりですので、お気兼ねなくお遣い下さい。」
というと、涙を流して喜んでいた。
聞けば、確認するまでは、手を付けられないと、日々ドキドキしながら、保管していたそうで。
「わぁ、それは悪い事をしてしまいましたね。来るのが遅くなって申し訳ない。
もっと他の内容で困った事か何かあったのかと、ドキドキしちゃいました。
私は、殆ど自給自足で暮らして行けてますので、お金が入って来ても、使うところが殆ど無いのですよ。」
と辺境の奥地を開拓して一人で従魔と住んでいる事を告げると、それはそれで、驚かれた。
「お一人で開拓ですか! それはまた、凄いですね。 魔物とかの襲撃は大丈夫なんですか?」
「ええ、周囲は沢山魔物居ますが、ここと同じくらいの城壁に囲まれてますし、従魔も強いので、全く問題無いですね。
従魔が日々、飯飯と五月蠅いですが、他は静かなものですよ。まあ、快適と言えば快適ですね。」
というと、少し寂しい者を見る様な目になった。
「お若いのに……」と呟きながら。
「ところで、ここの孤児院の子供達って、何人ぐらい居るのですか?」
「ここは、現在57名も居ましてね。日々騒々しいんですよ。」
と嬉しそうに微笑んでいる。
「わぁ、育ち盛りが57人って、それ食費だけでも相当掛かるでしょ?」
と聞くと、頷いていた。
「じゃあ、夕方までまだ時間あるし、良ければ、食材を提供しましょうか?
オークの肉とか沢山ありますが、如何ですか?
子供達と全員でBBQとか。」
「それは喜びますよ。子供達、肉に飢えてますから。」
「じゃあ、ガバスさん、俺ここで夕食の準備するので、ここで解散って事で良いですかね?
魔道具の販売の件は任せたし、問題ないですよね?」
「バカ野郎!! 問題大ありだよ! 何でシレッと、俺を除け者にしてんだよ!
お前の飯を俺にも食わせろ!!」
と怒ってた。
俺も司教様も思わず、大爆笑。
「司教様、笑い事じゃないんすよ? こいつの飯には、それだけの価値あるんすよ。」
「ほーー! そうなんですか! それは楽しみですね。」
「じゃあ、ガバスさんも参加で良いけど、ジェイドさん所で、パン100個ぐらい仕入れて来てよ。
出来れば、こう言う丸い感じのこれぐらいの奴が良いんだけど。
そうすれば、メッチャ美味しいのご馳走するよ?」
というと、判った!任せろ! と走り去った。
司教様に連れられ、孤児院の厨房へと入り、オークの肉のブロックをスライスして、焼き肉の用意をする。
更に、ミンチも用意し、大量のハンバーグを種を捏ねて作った。
寸胴を借りて、幾つか借りて、ミネストローネスープを作り、煮込んで行く。
ポテトの皮むきを手伝ってもらい、棒状に切って、水気をとり、油で揚げる準備をする。
大量のレタスは洗ってバラバラに、トマトは5mm厚ぐらいにスライスして貰った。
「いやぁ、これだけの量を一気に作るのは、初めてだから、大変だぁ」
と思わず、ボヤくが、顔には笑みが零れる。
ポテトフライを油で揚げ、塩を振って、油を切る。
100個程のハンバーグを焼くのは時間が掛かるので、取り掛かる。
途中、油を十分に切ったフライドポテトを一旦収納し、バラバラにした野菜類も収納する。
マスタードや、ケチャップ、マヨネーズ、塩胡椒等が途中で切れたので、テントを出して、食料庫から補充しておいた。
お構いなしに、目の前で、色々と出したり入れたりしてたので、シスター達に驚かれたのだが、そこはスルーして貰う様にお願いしておいた。
2時間ぐらいで、100個程のハンバーグも焼き終わり、あとは、焼き肉の鉄板か、網かを用意する必要があるのだが、俺の持って居るBBQコンロは、生憎と精々4~6名用で流石に司教様やシスター達や俺達を入れた70名は無理である。
で、考えたのは、無いなら作ちゃえば?って事で。
まずは、庭に土魔法で、炭を入れる空気穴付きの土台を20mも作成した。これは、1mで4人として、余裕を見た感じ。
網は、錬金で、鉄のインゴットから無理矢理作って、1m長の物を20枚作成。
ふぅ~。次に、炭か。確かテントの食料倉庫にあったな。
再び、テントを出し、倉庫を探すと、備長炭がゴッソリ入ってた。
なので、その備長炭と、ついでにベーコンとソーセージも大量に持って出た。
周囲では、司教様や、準備を手伝ってくれていたシスター達が、唖然として見て居るけど、スルースルー。
コンロ20mに備長炭をくまなく入れてっと、網は炭に火を点けてからだな。
これで準備完了? あ、食材とかを並べるテーブル無いじゃん。
って事で、土魔法で、ちょっと大きめのテーブルを作って、そこに食材を並べる。
「よしっと、これで後は、ガバスさんのパン待ちかな。
あ、そうだ、シスター、お皿とかフォークとかって、子供達の分、大丈夫ですよね?」
と振り返って聞いたのだが、ポカンと口を開けてるだけで、返事が無い。
「すみません、聞こえてますか? あのー、もしもーーし!」
ハッと我に返ったシスターが、凄い勢いで聞いて来る。
「えっと、このテーブルとか、魔法ですよね? 土魔法ですよね? 詠唱は?」
と。
「ん? はて? 詠唱ってのは何ですか?
あー、何か良く判らないですが、俺、独学の我流なんで、あまり詳しい事は判らないんですよ。」
と答えると、
「え? 独学!? いや、そう言う問題じゃ無い気が……」
とブツブツ言っていた。
「いや、気が付いたら、山奥で一人で暮らしていて、3年前にやっと、雷光の宿のジェイドさんに魔法の入門書を借りて写本させて貰ったので、後はホント我流で適当にやっただけなんで……。
全く人様に聞かれても、何ともねぇ。」
と再度補足すると、
「逆に入門書だけを読んで、3年でここまでになる方が、凄すぎです。」
「んー、確かに入門書って、わざと、判り辛く書かれてますよね。なので、写本する時に、要約したり、行間にある、本当の意味を書き写しながら、編集しましたね。」
「え? そうなんですか!! 確かにどの入門書も判り辛いとは思ってましたが、そのせいなのか。」
と考え込んでいた。
「何か無駄に敷居を高く見せてるだけで、無駄の多い本でしたね。確か70ページか80ページあったけど、纏めると、40ページぐらいに簡素になりましたからね。」
というと、シスターが愕然として崩れ落ち、
「ああ、あの苦悩の毎日は何だったんだろう――」
と嘆いていた。
「確か、まだ写本した物が残ってる筈だな。見てみますか?」
というと、ガッチリ手を掴まれて、お願いされた。
ドン引きしながらも、写本の束(俺が紐で綴じた奴)を出して、渡すと、「お借りします!」言い残して消えた。
「あのぉ~……それよりも、お皿とフォークは……」
「ハハハ、すみませんな。あの子は昔っから、魔法大好きな子でしてね。
それが、何年練習しても、どんな入門書を読んでみても、サッパリで、最近は少し諦めていた様だったんですが、ケンジさんの魔法を見て再燃したのかも知れません。
お皿とフォークは用意させますから。」
と司教様が笑っていた。
「そろそろ、良い頃合いだよな。炭に火を点けるか。」
孤児院の建物の奥から、ガヤガヤ、キャッキャと子供らの声がして来た。
シスター達に引き連れられた、子供達が
「えー? シスター、今日はお外でご飯なの?」
「わぁーー、真っ白な大きなウサちゃんいるーー」
「おーきなネコしゃんもいまちゅ。」
と大騒ぎしている。
あ、あんな小さい子も居るのか? ちょっとコンロに届かないな。
「ちょっと踏み台作るか。」
とコンロの前に踏み台を瞬時に作った。
で、炭に火魔法で点火っと。
「「「「「わぁーーー」」」」」
「「「「「「しゅごいー」」」」」」」
と周りから子供らの歓声が沸き起こる。
素早く網を20枚セットして、
「じゃあ、背の小さい子は、こっちの踏み台のある方に乗ってね。」
「届く子は、踏み台無しで。 お肉は沢山あるから、好きなだけ食べてね。」
というと
「「「「「「「「「「わーーい!!!!」」」」」」」」」」
と大喜び。
揉みダレで寝かした物と塩胡椒の物と2種類の肉を、ドンドン網の上に載せていき、辺り一面に、肉の焼ける、良い匂いが充満する。
すると、そこへ、
「あーー! もう始めてやがる! ひでーな。」
「だから、俺がもっと急げって言ったろ?」
と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
ガバスさんとジェイドさんである。
大きな箱にパンを詰め込み、やって来た。
「ああ、ナイスなタイミングですね。今焼き始めたばかりですよ。」
「あーー、疲れた。」
と言う2人に皿とフォークを渡して、焼き肉に参加させてやった。
ピョン吉とジジも五月蠅いので、焼いた肉を渡し、俺はハンバーガーの仕込みに入る。
テントのキッチンで、ハンバーガーを只管作り、倉庫にあった水分の浸みない包み紙に包んで行く。
何とか100個完成したので、それを全員に配って回る。
やはり、ピョン吉とジジが、<寄越せ!>と騒ぐので、奴らにも渡した。
ハンバーガーを初めて食べる全員が、美味しい、美味しいと騒ぎまくる。
ジェイドさんに、素早く呼び止められ、
「なあ、ケンジ、これなんて食べ物なの? メッチャ美味いんだけど。
作り方教えて!」
と縋られたので、後で教える事になってしまった。
肉は、ガンガン減るが、サラダが一向に減らない。
聞けば、結構皆さん野菜嫌いらしくて、苦手なんだそうで。
しょうが無いので、ドレッシングを掛けたのを無理矢理1口食わせると、
「あれ? 美味しい! 何これ? 青臭くない」
と子供が騒ぎ出す。
またジェイドさんに捕まり、ドレッシングの作り方も約束させられた。
こうして、日暮れまで続いたBBQもやっと終わり、ホッと一息着きながら、自分の食事を素早く取ったのだった。
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メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)
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