第39話 ザ・修羅場 (改)

結果、華々しく真っ赤に光った。



ああ、やっぱりか。


「ん?? これはどう言う事じゃ? 赤?」


「ああ~。まさか、こんな――。

――残念ながら、赤は血縁関係が無い場合となります。つまり親子関係が不成立です。

しかし、恐れながら、この結果に関しては、『女神エスターシャ様に誓って』この結果に間違いございません。特に人族同士の婚姻関係に於いての判定率は100%です。」

と沈痛な表情で語る俺。


実際問題、経験者だけに、俺は色々な事が頭を巡り、悲しかった。

途中の奥方の反応を横目でチラチラ見てたので、ほぼ黒で間違い無いとは思っていたが、マックスさんの気持ちを思うとね……。



すると、

「え? そ、そんな嘘よ! そんな事はあり得ないわ! 貴方私を愚弄するの? 平民の分際で!!!」

と激怒するマリア嬢。


奥方はというと、油汗を流しながら、真っ青を通り越し、真っ白になって、アワアワと言っている。


「おい、エリザ、これはどう言う事だ? まさかお前、おれを謀っていたのか!!」


もし、疑いが黒だった場合の話をしていたのだが、この世界の王族や貴族にとって、『血脈』は実に重要であり、この血脈こそが、国を統治する根幹となっている。

つまり、今回の結果の様に、血縁関係が否定されると、これはこの奥方の実家に取っても大打撃となり、結婚詐欺どころか、国全体を敵に回す様な裏切り行為と見なされるらしい。

なので、幾ら爵位が高かろうと、無関係で良くてお取り潰し、悪ければ、一族全員国家反逆罪として、死刑だそうで。


まあ、そうなると、敵も足掻く訳でして。


「あ、い、いえ、そ、そのような事はございませんわ。

それはきっとそのケンジなる者の陰謀ですわ。

そんな事があり得る訳がございません。」

と。


「そ、そうよ、お父様。私がお父様の子では無いなんて事がある訳がないじゃないですか!」

とマリア嬢も、必死である。


まあ、当の本人として、不義の子であれば、良くて平民堕ちだし、悪ければ……。

本人がまともな人間性であれば、救いの手はあるかもしれないが、こいつには無理だろう。



「奥方様、大変恐縮ではございますが、先程も申した様に、この判定結果は女神エスターシャ様に誓って、真実であると申しました。

つまり、女神エスターシャ様の誓いに対する侮辱でしょうか? では奥方様も誓って頂けますか?」


そう、この世界では、神話というか、完全なる伝承で神々の存在が明らかとなっている。

それは、ステータスパネルがあり、その中に希に女神エスターシャ様の加護等を持つ者が現れる事でも、実証されている。

つまり、そう言う世界に於いて、『女神エスターシャ様に誓う』とは最大限の誓約となる訳だ。

更に、無闇に『女神エスターシャ様に誓う』事は、通常行わない。 何故なら、嘘なのに誓うと、確実にその報いが来るからである。



「な、なんで私が、そんな事を、何処の馬の骨とも判らない、愚劣な平民如きに言われ、誓わなければならないのですか! 不敬ですよ?」

と焦ってゴネる奥方。


決め手があってもこれか。 もういい加減面倒だなぁ。 しょうがないなぁ…… 最悪、出すか? アレを。



「いい加減にしないか!! 往生際が悪過ぎる。

せっかく正直に言えば、穏便にと思っておったが、悪質すぎるだろ。」

とマックスさんが、声を荒らげて、一喝した。


シーンと静まり返る室内。

さっきまで、ピザとシェイクでワイワイ言っていたのが嘘の様である。

正に修羅場だ。


今思えば、俺の時も、第三者から見ると、こうだったのだろうか?

いや、俺の時は、逆に一方的にだったからなぁ。


「奥方様、私は平民かも知れませんが、その結果について『女神エスターシャ様に誓う』という事を行いました。

しかし、奥方様はそれすら出来ないのでしょうか?

人に罪をなすりつけるのが、貴族様の尊い血なのですか? 違いますよね? さあ、尊い出自の方ならば、散り際ぐらいは、その意気を見せて下さい。」

と静かに言うと、ワァーーーっとテーブルに突っ伏して、奥方様が泣き始めた。


そして、マリア嬢はというと、完全に目の焦点が合ってない。

口を半開きにして、

「そ、そんな、私が貴族の……お父様の子では無いなんて……」

と呪文の様に呟いていた。


「マリアよ、俺は再三お前に注意した筈だ。

真に貴族の血に恥じぬ行いをしろと。

俺が疑いを持った、一番の要因は、お前自身にあるのだ。

そして、お前が例え我が血を引いてなくとも、お前自身がまともであれば、俺は目を瞑ったかも知れん。

しかし、そんな俺の心を踏みにじったのは、お前だ。

この件は、お前の母や実家の公爵家が企てた犯罪であり、生まれたお前に罪はない。

だが、お前の貴族としての品格の無さがきっかけで判明したのだ。人の所為ではない事を肝に銘じよ。」




そして、決着が着いた様なので、俺とガバスさんは、長男君の案内の下、従魔と合流してた。


「今日は、色々とお見苦しいところを見せてしまい、申し訳無い。

また落ち着いたら、是非屋敷を訪ねて欲しい。」

と言われた。


「何か、色々とお気持ち察します。 気落ちしないで下さいね。

では、領主様へも宜しくお伝え下さい。」

と挨拶して屋敷の門を後にしたのだった。



「ふぅ~、取りあえず、修羅場は終えましたね。

一時は、あの身分証明書を使う事も覚悟したんですが、使わずに済んでホッとしました。」

と俺が言うと、


「げ! お前、そこまで覚悟してたのかよ。」

とガバスさんが驚いていた。


「何だか、少し気が抜けた感じというか、憑き物が落ちたというか、スッキリはしました。

が、しかし、やっぱり、女って怖いですねぇ。」

と俺が言うと、


「だから、何度も言うが、人によるってよ!」


「ええ、それも判ってますが、その最適な人と巡り会うってのは、なかなかに博打なのかなぁ とね。」

ガラケーのゲームで無課金ガチャのURぐらいの確率なのかな。

せめてジャンボ宝くじの末尾賞ぐらいの確立なら良いのだがなぁ……。


馬車での移動中、この魔道具の販売について話をしてみた。

「しっかし、恐ろしい魔道具だな。これ。」

とガバスさんが呟く。


「でも考え方によると思いますよ。

怖がる理由の無い人には、全然怖くはない筈です。

それに、子供に取っては、捨て子とか、迷子とか、人攫いとかで、親と離れ離れになったとしても、これで、親子関係が判明すれば、間違いはないでしょ?」

というと、


「まあ、そうだな。」

と呟いていた。


「まあ、これが世に出る事で、そう言う酷い事をする人が減れば、それだけ良い世の中になるんじゃないでしょうか?」


という事で、これの販売に関してを、丸投げした。


「まあ、これだけの物だ。安くはできねぇな。」

とニンマリとしていた。


「あ!そうだ!! 忘れてたが、ケンジ、司教様が、お前を連れて来いって、青い顔して、店に来たんだよ。

ちょっと、寄り道するぞ!」

と、御者に指示をしていた。


「ん? 何か問題でもあったんですかね?」

と俺も思わず心配になる。


もしかして、女神様から何か連絡――お達しって言うのかな? それがあったとか?

まあ俺に出来る事なら、何でも――。


しかし、直接、俺の方に言ってくれれば、もっとスムーズなんだけどなぁ。

やっぱり、そう言うのって、何か手順とかルールとかがあるのかねぇ。

出来れば、直接お礼も言いたいし、何でこうまで良くしてくれるのかも、聞いてみたいんだよね。


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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


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