第38話 追い込み (改)
改めて、領主様のご家族を呼んで頂き、全員に挨拶をする。
「お初にお目に掛かります。ケンジと申します。今日はちょっと色々新製品や美味しいデザートをご用意しました。
是非ともご意見をお聞かせ願いたいと思いまして。
評判次第では、王都へも持って行きたいと思っております。」
「あら、そうなの? その美味しい物とは?」
「お母様、所詮下世話な庶民の食べる様な物ですよ?」
と母と娘が鬱陶しい。
そこで、俺は、ピザとストロベリーシェークを取り出した。
「こちらは、ピザと申しまして、この3種類の他にも、色々な具の組み合わせで、幾らでもメニューが増やせる一品です。
そして、こちらは、ストロベリーシェークともうしまして、冷たく甘い飲み物となってます。
爽やかなイチゴの香りと味が癖になるかと。」
とご披露すると、下世話な食べ物と飲み物に、目を見開きロックオン。
「ピザは熱いのでお気を付け下さい。」
と注意しつつ、食べさせると、
「あら、とっても美味しいわ。下世話な庶民の食べ物にしては、やるわね?」
「ホント、チーズが蕩けてとても美味しいわ。」
「うむ。これは美味いな。」
「はい、お父様、これは我が領の名物料理にも出来ますね。」
「あ、冷たい!! 何これ、とても甘くて、ああ、これは堪りませんね。」
と全員、滅茶滅茶食い付いている。
お貴族様らしからぬ勢いで、一頻りガツガツと食べ終わった後、作戦段階の第二弾、今後は掛け算の教材をご披露する。
ガバスさんが、一通り説明し、俺が補足する感じで、商品説明を終えると、
「何じゃ、これは凄いのぉ。 まさかガバス、これもケンジか?」
「はい、ケンジのアイディアを元に当商会で製品に致しました。」
「何と!!! これは間違い無く、世界が変わるぞ!!
早速領主館にも収めてくれ。」
マックスさんが驚いている。
「お父様、これは素晴らしいですね。
これをマスターすれば、税の計算も速くなりますね。」
と流石に安定した賢さを披露するご長男さん。
「まあ、これの次もあるんですが、この掛け算を物にすると、例えばやり方によって、何処の誰が管理している畑の収穫率が良いかとかの判断も簡単に出来る様になりますよ。
そうすると、その人のノウハウを他へも適用出来れば、領地全体が潤う様にする事だって出来るかと。」
と俺が言うと、
「その方、ケンジとやらは、実に賢いですね。
是非とも我が家臣というか、右腕として活躍して欲しいです。」
と過分なお言葉を頂いた。
だが、断る!
「ああ、ケンジはな、ちょっとそう言う士官とか
実に残念だろ? 無理強いはいかん。まあ諦めるしかない。」
とナイスフォローの領主様。
「いやはや、どれも面白い商品だ。」
とマックスさんから、次の段階へと進む指示が飛ぶ。
今回の作戦では、事前に雰囲気を見て、何通りかのパターンを用意しておいたのだ。
そこで、俺は、
「ありがとうございます。実はあともう1つ、画期的な新製品がございます。
完成した時、私は震えました(色んな意味で)。」
と勿体ぶって、親子鑑定魔道具を取り出した。
「ほう、無骨な感じじゃが、飾り物ではないのぉ。」
と打ち合わせ通りの反応を示すマックスさん。
「はい、これはとある筋から依頼を受け、極秘に長い年月を費やし、ついに完成した魔道具でございます。」
「ほう、とある筋とな。で、どのような効果があるのじゃ?」
「はい、とある筋で、お家騒動がございまして。まあそう言う話なので、大っぴらには何処とは言えないのですが、これは親子関係を判定する魔道具でございます。」
と俺が自信満々に答える。
「ほほぉー! それは凄いな、で判定率はどれ位の確率なのじゃ?」
「フフフ。 100%にございます。 既に街中でかなりの実験を行いまして、200組中親子関係が成立したのが199組、1組は親子関係が無いと判断されました。
しかし結果は、奥方の不貞で、残念にも親子関係の無い事が判明しました。
これは自信を持ってお出し出来る製品になりました。」
と告げると、
「おお! それはまた凄いな。
なるほど、お家騒動対策か。
しかし、確かにそれは素晴らしい発明じゃな。」
と如何にも感心した様な演技をするマックスさん。
俺がチラリと横目に見ると、奥方だけ、実に判り易く挙動不審であらせられる。
そして、打ち合わせ通りに、
「ちょっと話の種に領主様、ご長男様、やって頂けますか?」
と俺が振ると、
「ハハハ。良いぞ。ワシもこれを王家に献上したいしのぉ。
どうすれば良いのじゃ?」
「はい、片方に人差し指を置いて下さい。……はいOKです。
では、反対側に、ご長男様、お願い出来ますか?」
「うむ、面白そうじゃ。これで良いか?」
「はい、OKです。 すると はい、親子関係が成立しました。」
「ほほー、これは面白いの。成立すると、緑の色に光るのか。
よし、どれもう一度、試しに……よし、じゃあ、折角じゃ、マリア、お前の指を置いてみい。」
と領主様が娘に声を掛けた瞬間、奥方が、真っ青な顔で、ガタガタ震えている。
ああ、やっぱりか。
「えー、お父様、そんな血を抜く様な痛い思いはしたくございませんわ。」
とナチュラルに回避しようとするマリア嬢。
しかし、彼女の顔色も心無し青い。もしかして知ってるのか?
「――ダメじゃ。王家に献上する前に貴族たるワシらが試さんでどうする。
それに、血を抜くと言っても全く痛くはないぞ?」
と言う声で、
「えーー、私痛いのとかダメなのに――」
とブーブー言いながらも指を置いたのだった。
--------------------------------------------------------------------------------------------
メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます