第37話 魔道具作り (改)

翌日から、俺は錬金小屋で、ギルドカードの調査に乗り出した。

と言っても分解する訳でもなく、刻まれた魔力の魔方陣を解析するだけである。


素人ではあるが、実は当時息子が実の子じゃない事が納得出来なくて、DNAによる親子判定を、色々と調べたのである。

DNA鑑定をすれば……もしかしてと必死で、ネットで調べたのだが、そんな淡い健二の期待は妻の爆弾発言で、一気に崩れ去った。


「いや、そもそもあんたとヤル前に私妊娠してたから、嘘も本当も無いのよ。一度だけ嫌々ヤッただけだし。」と。


そして、追い打ちを掛ける様に、息子からは、

「マジでキモイから。おめーなんかのDNAなんて要らねーし。」と罵られたのだった。


だからこそ、何としてもこの問題を解決したいと思っている訳だ。

俺が晴らせなかった無念を、領主様の件で晴らせれば、心の中の何かが晴れるのではないか? と考えている訳だ。



それから連日、食事と畑仕事以外の殆どを錬金小屋で過ごした。

そして、必死に考え、推測しつつ、色々なパターンの魔方陣で試して行くがなかなかDNAのパターンという物を限定出来なかった。

ネットで当時調べた、判定の基準となる物を思い出しながら、試行錯誤していく、何日掛けても上手くいかなかった。


「そもそも、俺なんかが、そんな凄い物を作れる訳が無かったのだろうか?」

と少し心が折れ掛けたのだが、何とか踏ん張り、再度トライを繰り返した。



2週間が過ぎようとしている時、完全に手詰まりで、ボーッと天井を見上げていると、魔力感知にピョン吉の反応を近くに感じた。

どうやら、籠もりっぱなしの俺の事を心配で、小屋の近くをウロウロしているらしい。

フフフ。可愛い奴め。


と心の中で思った瞬間何かが閃いた!


そう、魔力だ。血液中にも魔力が存在する。

この世界の血液を持つ生き物全てだ。

俺が魔力の反応を見て、ピョン吉と感じたのは、魔力の模様というか、魔力紋というべき物がピョン吉特有の物であったからだ。

ちなみに、魔物の種別によって、発生する魔力の周波数帯というか、特徴があったりする。

慣れれば、その特徴で、種別を判断も出来る訳だが、例えば、A0とA7は非常に魔力紋が似ている。

後で聞くと、実は兄弟だった。


つまり、血液からの魔力紋で親子の判定が出来るのではないかと考えた訳だ。


正にピョン吉大先生のファインプレー!



そして、それにヒントを得た俺は、更に試行錯誤を重ねる。


一旦見えた希望の光はやがて確信へと変わって行く。


魔力紋には、遺伝による伝承がある事を血液サンプルでも確認出来た。

後は、それを魔方陣にして刻み込めば――



「ヒャッホー-! 出来たーーーーー!!」


貰った血液サンプルでは100%の判定結果であった。


勿論、血縁関係で無い者同士では、親子判定が否定される。

兄弟に関しては、親子とはまた若干違うパターンになるが、その伝承される紋のパターンの度合いで二親等や三親等ぐらいの判定も可能となった。


早速10個同じ物を念のために作成して置いた。


「みんな! やっと完成したよ。

今夜は豪勢にパーティーしようぜ!」

とピョン吉達に言うと、キュッキュ、ニャーニャーと大喜び。

そうだね、ここ3週間以上、割と手抜き飯ばかりだったもんね、ごめんね。


従魔達は、その日の夕食で五月蠅いぐらいに騒ぎ、お代わりを要求して来た。

俺も長い没頭で疲れているんだがなぁ~。

全く容赦ねぇな、こいつら。



 ◇◇◇◇



そして翌朝、俺はピョン吉とジジを連れて、意気揚々とドワースの街を目指した。

心は晴れやかで、この件に白黒を付けられれば、何か俺の中で吹っ切れるのではないか? という予感がしていた。

過去の忌まわしい悲しみや虚しさに終止符を打つ為にも、是非とも良い結果を残したい。




街に入り、ガバスさんの店に立ち寄ると、早速一般テストを開始した。

200組の調査結果で、1組だけ、悲しい結末になってしまった。

血の涙を流すご主人の顔を、まともに見る事が出来なかった……。

結果、奥さんが不貞をゲロして、悲惨な結果になったのだった。

奥さんの見かけは、凄く貞淑で真面目そうな奥さんだっただけに、言葉が無かった。


やっぱ、こえぇよ! 女って。




「――ちょっとした事件はありましたが、まあ、100%の判定率が立証されたという事で、結果オーライです。」

と俺はテスト結果にのみ目を向け、取りあえず成功を宣言した。


「ちょっとした事件なぁ――」

と一部始終、俺のテストに同伴し、顔見知りの夫婦の間に起きた事件だっただけに、ガバスさんは、もの凄く苦い顔をしていた。



さあ、細事は忘れ、午後から領主館へと向かうとしよう!



好都合な事に、ガバスさんの方で作成した新製品、掛け算の教材が完成したとの事で、それを口実に持って行く事にした。

またそれだけでは、作戦上弱いので、俺も、ピザとシェイクを提供する事にした。

作り溜めしておいて、良かったよ。


領主館では、直ぐに面会する事が出来たので、領主様の書斎で軽くシナリオを打ち合わせし、搦め手無しで行く事にしたのだった。


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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


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