第33話 女神様とのご対面イベント (改)
「さて、後は、いよいよ、領主様の所か?」
とガバスさんが聞いて来た。
「あ、いや、その前に1箇所寄って頂きたいんですが、ダメですか?
実は神殿と孤児院に。」
とお願いすると、
「あー、そうだな。ケンジの場合は、特にそれ重要かもな。」
と納得して貰えた様だ。
馬車で今度は神殿へと進む。
馬車の中で、再度色々と神殿やこの世界の神々の事を聞くと、一応、主神はご存知の通りこの世界の創造神たる女神エスターシャ様で、他にも戦神や鍛冶神、錬金神、学問神等々、様々な個別のカテゴリーを管理している神様がいらっしゃるそうだ。
なるほど、やっぱり分業制にしないと、一人では管理出来ないよねぇ。
未だに、何故俺がこれだけの厚遇を受けているのかが、理解出来ないのだが、もしかすると、今日その謎が解き明かされるかもしれない。
等と話を聞いている内に、馬車はドンドンと進んで行く。
神殿があるのは、どちらかというと、住宅エリアみたいで、店舗とかは少ない感じだ。
暫く進むと、パルテノン神殿を思わせる様な、荘厳な柱が主張する建物が見えて来た。
勿論吹き抜けではなく、柱の奥には壁があって、ホールというか、祭壇のある教会の様な作りの空間になっている。
ほほー、これは立派だな。基本的に、家の神殿をデカくした感じ。 家のは神殿(小)だし。
中に入ると、祭壇には、家の神殿にもある様な女神様の像が置いてあった。
作法は判らなかったので、思わず、日本式に、二礼二拍手一礼をしたら、
「おい、ケンジ、何だお前、面白い祈りの仕方をするな?」
と軽く笑われた。
無礼な奴だな、これが日本式なんだよ! そんな異世界事情なんか知らないし。
ガバスさんのやり方を見て居ると、片膝をついて、手の指を組む感じで、軽く頭を下げて目を瞑っていた。
ふむ、そんな感じで良いのか。
俺も再度同じ様にして、もう一度女神様へお礼をお祈りしたのだった。
まあ、当然ではあるが、結果は特に何も起こらなかった。
ですよねぇ~~。そんな都合良く何かアドバイスくれたりとか光が差して、ご降臨されるとか、ないですよねぇ。
ハハハ。判ってましたよ?
ガバスさんは、司教さんに声を掛け、俺を紹介してくれた。
「どうも、ケンジです。初めまして。
一応、家にも神殿はあるんですが、折角なので寄らせて頂きました。
いやぁ、流石に素晴らしい荘厳な作りですね。」
と挨拶をした。
司教さんは、俺の家の神殿辺りで???って顔をしていたが、
「そうですか。それは態々お参りされて、感心な若者ですな。」
と和やかに返して来た。
「で、今日伺ったのは、神殿と孤児院に寄付をしたいと思いまして、どうすれば宜しいでしょうか?
神殿と孤児院バラバラの会計になっているのでしょうか?」
と聞いて見ると、
「ああ、それは本当にありがたいです。最近では、孤児も増えてしまい、なかなか資金繰りも大変でして。
お若い方でも、ケンジさんの様に思ってくれる方が増えれば、もう少し子供らにも沢山食べさせてやる事が出来るんですが、なかなか難しいものです。
本当に、非常に助かります。神殿も孤児院も同じ神殿の一部なので、どちらにしても同じです。」
との事だった。
何でも、元々この街には孤児が多い。
理由は辺境故に、魔物が多く、冒険者も多い。
その冒険者を親に持つ子供達が、親が亡くなってしまい、孤児になる事が殆どらしい。
なので、増える一方で資金が幾らあっても足り無いのだとか。
収容人数も現在ギリギリだとかで、増築したくても資金が不足して難しい。
増築費にお金を回せば、子供達が飢えるし、増築しないと、夜露や雨風に晒される溢れた孤児が増えるというジレンマらしい。
なので、俺は、先程引き出した大金貨5枚が入った小さい袋を取り出して、司教さんに手渡した。
「是非これを使って、子供らがスクスク育つ様にお役立て下さい。出来れば、日々の寝床と食事に困らない様になれば良いんですがね。」
「ありがとうございます。子供らも喜びます。是非またお参りに来て下さいね。」
とお礼を言われ、こちらも頭を下げて、神殿を後にした。
「さあ、いよいよ、本日のメインイベントかぁ~~。
あぁ――胃が痛ぇ~~。嫌ダーーーーー お家に帰りたーーい!」
と俺が馬車に乗り込みながら、駄々を捏ねる。
「ハッハッハ。なーに、しけた面してんだよ。目瞑ってる内、天井のシミを数えている内に、直ぐに終わるって。」
「それ、絶対に違うよね?」
「ハッハッハ。 でよぉ~、ケンジ、お前、あれって幾ら寄付したんだ?」
とガバスさんが聞いて来た。
「ん? 寸志だよ寸志。内緒内緒。ハッハッハ。」
と言って笑って誤魔化した。
馬車が走り出した後、神殿で司教が卒倒するという事件が起こったらしいが、俺は無実だ!!
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メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)
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