第31話 商業ギルドでの興奮 (改)

さて次は商業ギルドである。

やはり馬車で移動し、ガバスさんに続いて、商業ギルドのギルドマスター室へと通された。

よくよく考えると、ここでギルドマスターに逢うのは初めてだったが、出て来た女性はエルフの女性であった。


「お! これが噂に聞くエルフさんですか!!」

と長い耳を見て、感動する俺。


「あ、大変申し訳ありません。話にしか聞いた事が無かったので、思わず感動してしまいました。

ご不快な思いをさせてしまいました。」

と謝る。


「ハッハッハ。まあ不躾にジロジロ見られると、誰しもあまり気持ちの良い物ではないからのぉ。

初めましてじゃな、商業ギルドのギルドマスターやってる、キャサリンじゃ。」

とエルフさん。


「どうも、初めまして、ケンジです。

いやぁ~、実は今日あまり気乗りしてなくて、朝から胃が締め付けられる感じで、ブルーになっていたんですが、ちょっとホッとしました。

しかし、この街にもエルフの方が住んでいらしたんですね? 俺世間知らずで引き篭もってるので、知りませんでした。」

と挨拶をする。


で、こちらも、長々と更新手続きをしていなかったので、カードランクの更新となった。

元々はFランク会員だったのが、お陰様で、知らぬ内に取りあえずSランクになってしまっていた。

理由は、ガバスさんと、ハ……ジェイドさんの振り込みで、塵も積もればで7億8000万マルカ+端数となっていた。


「ねえ、ガバスさん、これ幾ら何でも貰いすぎじゃないの?」

と聞くと、契約通りでこの金額なんだそうで。


なので、取りあえず納得しつつ、一昨日俺が提案した掛け算の教材の件の契約も追加し、ギルドに提出した。

あと、ガバスさんに聞いて見ると、神殿や孤児院の方の寄付って現金しかダメらしい。

なので、キャサリンさんに聞くと、5億マルカなら現金で出せるとの事で、5億マルカを引き出した。

これで、手元には大金貨10枚が戻った事になる。


あと、キャサリンさんに、俺が作ったポーションを取り出して、買取可能かを尋ねてみると、瓶を見てクワッと目を見開き、暫く固まっていた。

「あれ? ダメな感じですか。 やっぱもっと精進しないとダメですね。」

と引っ込めようとしたら、慌てて、ガバッと出した瓶を身体で覆ってプロテクトされた。


「いや、ダメじゃないから。ダメじゃないからの! 寧ろ凄く良い!!

1本金貨1枚じゃ! どうじゃ!? いや、そうか、金貨1枚と小金貨3枚まで出す。」

と自分で自分の提示した金額をせり上げるキャサリンさん。


俺が余りの反応にポカーンとしていると、


「うーん、なかなかどうして、商売上手じゃのう。判った。金貨1枚と小金貨5枚。これ以上は無理じゃ。」


と勘違いして更に値が上がった。


「えっと、これ、そんな値段で、良いんですか? 1500万マルカじゃないですか!

10本だと、それだけで1億5000万マルカですよ? 本当に?」

というと、


「判ったのじゃ。欲を出した私が悪かったのじゃ。10本で2億マルカで何とか売って欲しい。」

と何か反省した感じになっている。


「いや、まあそれで構わないのですが、それってそんなに凄いんですか?」

素朴な疑問をぶつけてみると、


「お主、それを判って吊り上げておったんじゃないのか?

これはどれも上級ポーションの更に上、特級ポーションじゃぞ? 下手な部位欠損辺りなら、物さえ残っていればくっついて治るぞい。」

と。


「いや、それはそうですが、元々はこちらで購入した錬金のレシピですから、他の錬金士だって作れるでしょ?

俺だって、作れたぐらいですし。それ練習で沢山作ったんですよ。

あとまだ200本ぐらいありますね。」

というと、バカ笑いを始めた。


「ヒャッハッハハ。長年生きておるが、こんなに馬鹿げた話で笑ったのは初めてじゃ。

お主の錬金の才能も凄いが、レシピ通りか……フフフ。まず普通は、そのレシピの材料が揃わんのじゃよ。」

とキャサリンさん。


「あれれ? 何か入手困難なのはありましたっけ? エリクシールは流石に2つ揃わないので断念したけど、特級ポーションは、どれも普通にそこらにある材料だったような……。」

と俺はレシピ本を取り出して、再度確認した。


「えっと、まずは、神聖水と、エリク・グラスの花びらと、マジックマッシュに、マギ草の根ですよね。」

と頭を捻る。


「じゃろ! まず神聖水はダンジョンの奥深くに湧き出る水を汲んで来て、1週間月に晒してから、漸く神聖水となるのじゃぞ?

まず、その水の入手が困難じゃ。次にエリク・グラスなんざ、そうそう生えておらんじゃろ。

マジックマッシュなんぞ、年間に数本発見される程度じゃし。唯一一番手に入るのがマギ草の根ぐらいじゃ。」

と。


あれれ? 俺の周りには結構あるんだけどなぁ。

それにその水は単に泉の水なんだよね。


「余談じゃが、私の鑑定スキルでは、これは特級ポーションは特級ポーションでも、極上と出ておる。」


「おお! 鑑定スキル! そんなのがあるんですか!! 良いですねぇ鑑定スキル。

色々知りたい事が判るんでしょう? 取りたいなぁ~鑑定スキル。」

と一気に鑑定スキルに興奮する俺。


まあ、理由を理解し、190本+10本で200本を買い取って貰った。

現金はさっきので足り無いという事だし、売り上げはカードに振り込んで貰う事に。

つまり、1本2000万マルカ×200本=40億マルカである。


ふむ。何かあっても、これだけで暮らして行けるな。


「是非また売ってくれ!」とお願いされた。


まあ、一応予備に自分用の100本が残ってるんだけどね。


「ええ、勿論また継続して作りますよ。

でも増えすぎたら、余ってしまうんじゃないんですか?」

と過剰供給を心配したら、年間に1万本以上の需要があるらしい。

消耗品だから、これで冒険者や兵士が生き残れば、使った分だけまた売れると。

更に、キャサリンさん曰く、通常一般の錬金士が作った特級ポーションは、経年劣化して行くので、年数と共に効果が薄れるらしいのだが、俺の作った特級ポーションは鑑定スキルで確認したところ、劣化しないらしい。


「へー? 何が違うのでしょうね? 水かな?」


「うむ。その可能性は高いのぉ。神聖水に込められた物や純度でランクが変化するからのぉ。

それにのぉ、後は濾過じゃ。このポーションには濁りが全く無いでのぉ。不純物が混じるとそれだけ薬効や劣化が早くなるからのぉ。」


「なるほどね。大体理解しました。濁り云々の件は、錬金士の性格が出るんじゃないですか?

俺の錬金小屋って、滅茶滅茶クリーンな環境なんですよ。謂わば無菌ルームに近い感じですかね。

それに、確実にエアシャワーで埃を部屋に持ち込まない様にしてますからね。」

と補足した。


「ほぉーー! 無菌ルーム? 良く判らんが、一度お主の無菌ルームとやらを見せて貰いたい物じゃのぉ。」

とキャサリンさん。


「ハハハハ。まず来る事は無理だと思いますよ。」

と笑うと、


「チッ……ケチじゃのぉ。」


「いや、まああまり人を招き入れたくないってのもあるんですが、物理的に家まで来られる人は少ないと思います。

なんせ、周りは魔物だらけですから。」

と説明したら、驚いていた。


「しかし良いなぁ鑑定スキル。

キャサリンさんは、元々鑑定スキルをお持ちだったんですか? それとも後から生えた感じですか?」

と聞くと、


「いや、そうじゃないぞ。私のは、後から生えたのじゃ。

理由は分からんが、まあ昔から知る事が好きでのぉ。本や人から、色々な知識を蓄積してのぉ。

その結果、未知の物があると、色々調べたりしておったら、ある日生えたのじゃ。」

と素晴らしい情報を頂いた。


「マジですか! おお~ やっぱ図書館に籠もろうかな。」

と思案し出す。


「ハハハ。まあ人族はちと不利じゃの。私は100年ぐらい同じ研究生活を続けてやっと生えたんじゃから。

エルフならではの、時間技じゃ。」

と。


「ああ、そうか、エルフの方って長寿でしたね。 という事はキャサリンさんも20歳ぐらいの美人さんですが、実はそうではないと?」


「こ、こら! まあ若い絶世の別嬪さんなのは認めるが、レディーに歳を聞いてはダメじゃ!」

と顔を真っ赤にしてプイと横を向いてしまった。 ハハハ。可愛いな。


まあ、錬金小屋を見せる事に関しては一応、保留にして、またそのうちポーションを持って来る事は確約させられたのだった。


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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


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