第30話 冒険者ギルドでの再会 (改)

朝食を食べ、ユックリとコーヒーを飲んで寛いでいたが、徐々に出発の時間が近づくにつれ、どうした事か、胃が締め付けられる感じがする。

まあ、久々に自分を晒すのだから、しょうがないか。


この先、旅をするにしても、結局は人前に出る訳だからと、自分を納得させ、出発した。

途中まで全員で移動していたが、城門が見える寸前で、Aシリーズにはジジの影に入れて貰った。

本当にこのジジのスキルは凄いな。

まあ、本人は入れた分だけ、『疲れる』らしいが。


俺の巾着袋には、植物は別だが、その他の生ある生き物は入らない。

だが、ジジの影には、生き物が入れられるのだ。

更に、本人自身も影に入って、影から影へと移動する『影走り』が使える。

まるで、忍者の様に影から影へ移動して、監視する事も、暗殺する事も出来る。


影に入ってしまうと、俺の探知でも引っかからないという、正にステルスな技だ。


城門から500m手前で、街道に出て行くと、周りの馬車や、冒険者や、旅人が、ザワザワと騒ぎ出す。


なんか、メッチャ見られてるんですけど。


「キャーー!もしかして、あの子じゃないの? メッチャイケメンになってるわーー!」

「おお、もしかして、あの時の兎使いか!」

「あのホーンラビット、デカ過ぎじゃね?」

「きゃぁー、あの黒い猫大きいわぁー、毛並みが堪らん。」

等と言う声も聞こえる。



検問の列に並んだが、前の馬車の奴とか、身を乗り出して、こっちをガン見しているし。

思わず、顔が引き攣ってしまう。


<お前ら、言って置いた様に、大人しく頼むな。>

<はいにゃ>

<へーい>



そしてやっと順番が来たが、門番の衛兵の顔がかなり青い。

「み、身分証を! あとこいつらは、従魔で良いのか?」


「ああ、黒い方は、ギルドで今日登録しますので。

身分証は、これで良いですか?」

と商業ギルドのカードを差し出すと、


「あ!」って顔をした。

どうやら、何かの通達があったらしい。


そして、ジジの仮従魔のペンダントを受け取り、街の中へと入って行った。


<ねーねー、主、街の中に入ったね。すっごーーい、人が一杯だー!>

とA0が驚いている。


<ねー、主、あの何かオジサンが焼いてるのって、何? 肉串?>

とA3も聞いて来る。


まあ、大人しくしてくれているので、屋台に立ち寄り、肉串を13本買って、10本を影に入れてやった。


<フフ>

<<<<<<<<<<わーーい!>>>>>>>>>>

とピョン吉の笑い声と、Aシリーズの歓声が聞こえた。


一方ジジは、キョロキョロと辺りを見回して、興奮している。

<わぁー、こんなに沢山食べ物売ってるにゃ! 主、全部買い占めるにゃ!>

と。


<いや、全部は買い占めないぞ。そんな事したら、他の人が困るだろ? 後でまた買ってやるから。>


<わ、判ったにゃ。>



ジジを何とか納得させ、ガバスさんの店へと向かう。


ガバスさんの店は既に開店していて、既に客で混雑していた。


「困ったな、こんなに客が多いと、声を掛け辛いな。」


店の中を覗きながら、キョロキョロしていると、先日の塩対応店員と目が合った。

ハッとする店員。


俺が片手を上げると、店の奥へと消えて行った。

暫くすると、裏口から、水色ポニテのお姉さんが出て来て、裏口へと通された。

どうやら、あの店員は逃げた訳では無かったようで、ホッとする。



「わぁ、あの時のウサちゃんですか。デカくなりましたねぇ。

そしてこの黒い子、可愛いですねぇ。」

とジジを撫でる。


「ハハハ、そうなんだよね。どれもこれも大きくなっちゃって、風呂が大変ですよ。」


「そうなんですね? あ、今、会長も来ますし、表に馬車を回してますから。」



「おお、ケンジ。良かった。ちゃんと来てくれて。」

と満面の笑みのガバスさん。


「ハハハ。今朝は急に胃が締め付けられる感じで、一瞬止めようかと……」


「勘弁してくれよ。俺、昨日は駆け回って色々交渉したのに。」

とガバスさんが縋り付く。


「ハハハ、思っただけですから。」




で、馬車が来るまでに、話を聞くと、サンダーさんとも話は通ってギルドの裏口からギルドマスター室に入る事となったらしい。

商業ギルドは、職員に徹底して通達されているので、問題無し。

ハゲ……ジェイドさんにも逢える手筈になっているそうな。

サンダーさんもジェイドさんも、涙を流して喜んでいたらしい。


で、問題の元受付嬢だが、大金貨5枚で解放出来る事になったらしい。

しかし、散々止められたって。

まあ最後は被害を受けた本人の意思だからって事で、大金貨5枚までに落ち着いたと。

尚、現在奴は生きては居るが、地獄の様な環境に居るらしい。(詳しくは教えてくれなかったが)

なので、直接は逢えないと言っていた。


「ああ、別に逢いたくは無いので、それは大丈夫です。

寧ろ二度と会いたくないですね。」


「しかし、色々ご面倒をお願いして申し訳なかったですね。

ありがとうございます。」

とお礼を言うと、


「ハッハッハ。感謝するなら、ちゃんとこれからも時々でも良いから顔を見せろよ?」

と釘を刺された。


「ハハハハ……」


「あ、そうそう、それとな、その元受付嬢の解放の件で、やむなく領主様も間に入って貰わざるを得なくてな。

全てが終わってから、最後で良いから、顔を見せてくれって事になってるから。」

と最後に爆弾をぶっ込んできた。


「えぇぇぇ!? それは嫌だ!!」

と俺が叫ぶと、ガバスさんが悪い笑みを浮かべつつ、俺の耳元で小声で告げる。


「(大丈夫だ。あの平原の件は喋ってないからな)

まあ、ほら王家も一枚噛んでるから、解放するにしても、領主様を介してじゃないと、話が進まなかったんだぞ?

それとも、あんな奴の為に、王都まで行って、王様に謁見してお願いする方が良かったか?」

と脅してきやがった。


「わ、判ったよ………やっぱ、人って怖いわぁ~。」

と俺がボヤくのだった。



 ◇◇◇◇



ガバスさんに連れられ、馬車で冒険者ギルドの裏手に回り、懐かしいギルドマスター室へと通された。


「おおおおお! ケンジーーーー!!!」

と涙ぐむサンダーさん。 少し老けた?


まあ、色々と謝罪を受け、了承して何か知らんが、Aランクのカードを受け取った。

で、貯まりに貯まった当時の依頼書の精算と、倉庫でオーガの引き渡しを行う。

まあ、ついでに、溜まった魔物を一部出したら、またまたドン引きされた。


「災害級が増えてる。ヤバいのが増えてるし。」


更に、目的の一つであった従魔登録と更新を行うと、ジジの存在にも驚いて居たが、影からドンドンと出て来て、嬉し気にキュッキュと鳴くキラー・ホーンラビットの群に、アワアワとしていた。

これには、ガバスさんも青い顔をしていたが。


「なんだよ、この従魔のヤバさは。

何? ピョン吉ってキングに進化したの? え?こいつらって元はただのホーンラビットだって?

で、更にヤバいのは、なんだよ、このシャドー・キャットの進化種は!! ハイパー・シャドー・キャットだって? それSSランクじゃん。

わぁ~~、ヤバいぞー!」

とサンダーさんが焦っていて、ちょっと面白かった。

サンダーさん曰く、どれも身体が大きくて、通常の進化種以上の力を感じるらしい。


「ふむ………、そう言われても、俺にとっては、可愛いペット――従魔ですからね。 それ程はヤバくないですよ?」


まあ、何だかんだで取りあえず、一番大事な従魔登録も完了した。

当時の顔見知りである、ロジャーさんや倉庫のサムさん、俺の登録をした受付のお姉さんと挨拶をして、ギルドを後にした。

ちなみに、やはり、ギルドの口座残高は酷い事になっていた。

ギルドからの賠償金や買取の入金で、8億5000万マルカ+端数でした。


まあ、既に5億マルカを懐から先に出しているから、差し引きで3億5000万マルカとなるが、まあ使わないお金があってもなぁ。



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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


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