第14話 寝床と髪の毛は重要 (改)
ガバスさんと別れ、今日は先に冒険者ギルドの受付のお姉さんから教えて貰った、小麦亭へのチェックインを先にする事にした。
やって来た小麦亭は、そんなに大きくも無く、雷光の宿と比べると庶民的な趣の宿だった。
しかし、豪勢ではないけど、清潔さと温かみのある感じ。
中に入ると、掃除中の女の子が、
「いらっしゃい。お食事ですか?」
と聞いて来たので、
「あ、いや、ギルドのお姉さんに聞いて、こちらに来た宿泊希望者です。」
というと、
「あら、可愛いのに、冒険者なのね? へぇ~、凄いねぇ。
あ、宿泊だったわね。一泊素泊まりが5500マルカ、1泊夕食と朝食の2食付きで7000マルカよ。
あと、身体を拭く木桶とお湯が要るなら、500マルカね。
まあ、身体を拭くぐらいなら、街の公衆浴場に700マルカで入れるから、そっちをお薦めするけどね。」
と女の子が気安い感じで話掛けて来る。
「じゃあ、取りあえず、1泊2食付きでお願いします。
風呂屋って、何時ぐらいまでやっているのでしょうか?」
と聞くと、夕方5時~10時ぐらいまでらしい。
場所は割とここから近くて、徒歩5分くらいだそうだ。
俺宿泊代金を払い、部屋の鍵を受け取った。
「あれ? ところで今気付いたんだけど、それ従魔なの?」
とピョン吉の方を見て触りたそうに聞いて来た。
「ええ、従魔です。大人しいから、ご迷惑は掛けませんよ。」
と答えると、
「そ、そうなのね。 ねぇ、触っても良いかな?」
と指をワキワキさせながら、聞いてきた。
「ええ、余り人慣れしてないから、優しく触って下さいね?」
というと、
「勿論よ! 私の指先で天国に連れて行ってあげるわよ!」
と言って、早速モフり出した。
流石は、指先自慢をするだけあって、ピョン吉は嬉しそうにしていたので良いのだが、女の子の方は、口を半開きにして、ニマーとだらしなく笑っている。
これは、放送出来ない感じの顔だな。と内心苦笑いするのだった。
そして、10分程モフ続けていて、終わる気がしなかったので、正気に戻してやった。
「あのぉ、そろそろ宜しいでしょうか?」
と言う俺の声で、ハッとして涎を手の甲で拭う少女。
キリリと顔を締め、
「では、ごゆっくりどうぞ。」
と今までの顔を無かったかの如くに振る舞っていた。
俺はその変わり身の早さに驚きつつ、確認の為一旦部屋へと足を運んだ。
部屋は狭く、4畳あるか無いかぐらいで、シングルベッドが置いてあった。
ベットマットは、それ程質が良い感じではなく、ソコソコ草臥れた感じで、真ん中の辺りが既に少し沈み込んでいた。
「うーん、前世の最後を思えば、贅沢は言えないが、これはちょっとなぁ。」
まあ、飯がどうか判らないが、流石にここに連泊する気にはならなかった。
俺って、こっちに来てからの3ヵ月で贅沢になっちゃったんだろうか?
と少し反省もしたが、でもこのベッドより、まだ畳に布団の方が、マシに思えたのだった。
前世では、出張先とかで下手なベッドで寝ると、腰が痛くなってしまって寝付けなかったりしたし、死ぬ直前まではせんべい布団で寝てたけど、寒さ以外は特に腰も痛くならなかったからなぁ。
やっぱり寝床の環境って大切だよね? 日々のモチベーションに大きく影響するよね?
そう考えると、やっぱ、何だかんだ言っても、雷光の宿、良かったよな。
風呂もあったし、ベッドも、食事も……マスターはハゲだったけど。クックック。
まあ、ジェイドさんのノリと人柄は好きだったしな。ハゲてたけど。
ちょっとジェイドさんの頭を思い出し、クスクス笑いをしてしまう。
本人曰く、剃ってるだけとは言っていたがな。
そう言えば、ガバスさんも、少し来てたな……。
魔法のある世界でも、毛根の再生って難しいのかな?
髪は長い友達って言うぐらいだし、そのうち、錬金とか勉強して、毛生え薬でも作れたら、プレゼントしてみようかな。
部屋で一頻りハゲネタで和んでから、冒険者ギルドへと出掛けるのであった。
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メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/21)
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