第8話 ガバスさん講座 (改)
一息つくために、コーヒーを入れると、その漂うコーヒーの香りに興味を示し始めるガバスさん。
どうやら、この世界では、コーヒーは出回ってないらしい。豆があるのかも不明。
「なんじゃ、この良い香りは。 飲み物か?」
「ええ、これはコーヒーですね。 赤い木の実でその中の豆……確か薄緑色だったかな?
それを天日干しで乾燥させて、その後焙煎して、挽いて荒い粒にし、お湯で濾すとこう言う飲み物になります。
お好みで、ミルクや砂糖を入れて飲んだり、好きな人は何も入れずに、香りや味を楽しむ飲み物ですね。」
と説明すると、最初はそのままブラックで飲む事にしたらしい。
「ほぉー、苦みや酸味はあるが、それが美味いな!
結構癖になりそうな味だ。」
とお気に召して貰えたらしい。
そして、ガバスさん講座は続く。
次は、この世界のお金に関してである。
この世界のお金の単位は全世界共通で、マルカというらしい。
100マルカ とかって言い方ね。
で、札は無く、全て硬貨なのだそうで。
硬貨に関しては、11種類ある。
小銅貨、銅貨、大銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、小金貨、金貨、大金貨、白金貨、黒金貨
各10枚単位で1つ上の硬貨と同じ。
つまり、
小銅貨 1枚=1マルカ
銅貨 1枚=10マルカ
大銅貨 1枚=100マルカ
小銀貨 1枚=1000マルカ
銀貨 1枚=10000マルカ
大銀貨 1枚=100000マルカ
小金貨 1枚=1000000マルカ
金貨 1枚=10000000マルカ
大金貨 1枚=100000000マルカ
白金貨 1枚=1000000000マルカ
黒金貨 1枚=10000000000マルカ
となる。
お金の価値であるが、大体、街の食堂で1食すると、700マルカ~1000マルカで、黒パン1つで100~150マルカ。
貴族様ご愛用の白パン1つで400マルカ。
宿の宿泊料金は低所得冒険者向けで素泊まり2000~3000マルカ、普通の宿で素泊まり6000マルカ~8000マルカ、高級宿で10000マルカ~10000000マルカ
聞いた感じだと、ざっくり円と同じぐらいの感覚っぽい。
で、俺の巾着袋こと、マジックポーチの中には、
小銅貨100枚
銅貨100枚
大銅貨100枚
小銀貨100枚
銀貨100枚
大銀貨100枚
小金貨100枚
金貨100枚
大金貨100枚
白金貨10枚
が入っている。
ヤベー! これ絶対ヤベー!! もう一生働かなくても暮らせるんじゃないか?
生前……いや前世か。前世では町のパン屋さんから100円で大量に分けて貰っていたパンの耳で食いつないだりしていたが、食糧倉庫とこの膨大なお金……ちょっと冷や汗出ちゃうけど、もうマジで生きて行く上で、食うには困る事は無いだろうな。
まあ、貧乏症なので、働かないなんてのは精神衛生上難しいが、でも前世の様に、お金に追われる様な働き方はしなくて済みそうである。
出来れば、適度に働き、趣味を見つけ、ノンビリと暮らしたい。
旅行も良いよなぁ~。
じゃあ、これで家とか買っちゃえば、良いか? そこから彼方此方に旅行したりとか……
と想ったのだが、
「いや、おまえさんが、幾らお金を持っているのかまでは、勘ぐったりしねぇけど、取りあえず、直ぐに家を持つのは、止めときな!
ケンジの様な容姿の良い若い奴が、イキナリ街に来て、家を買うなんざ、トラブルの予感しかしねぇし。」
と止められた。
ちなみに、俺の容姿だが、この世界でも、かなりヤバい程の美少年なんだそうだ。
おまけに、強そうには全く見えず、持ち前の性格のせいで、低姿勢で、与し易いと侮られる可能性が高いらしい。
ああ、こっちの世界でもこのパターンな訳か。
特に冒険者って家業は、侮られると商売にならないという認識があるらしく、横柄な物言いや態度が主流だそうで。
全く、何処のヤクザ映画の世界感かって話だよ。
なので、冒険者として、ある程度の力を示してから買う方が良いと、忠告されたのだった。
ちなみに、家の価格だが、条件によるので、何とも言えないが、そこそこの治安の場所で、普通に3DKぐらいの風呂無し一軒家は金貨1枚から売ってるらしい。
この世界の平民は風呂無しが大半で、街には風呂屋があって、そこに入りに行くのが普通。
大商会の会長や、貴族ぐらいしか、風呂付きの家は持って居ないとの事。
なので、旅先の野営で風呂なんて贅沢は、お目に掛かった事が無いらしい。
だから、このテントの風呂を見て、後で是非入らせてくれと懇願されたのだった。
ガバスさんのお陰で、その他の情報も色々と教えて貰い、大体大まかなこの世界の様子や常識が判った。
この世界には、戸籍という厳密な管理はしていない。
戸籍に基づく管理はしていないが、身分証という管理の仕方はしている。
だから、余程の山奥や辺境から出て来ない限り、某かの身分証を持っているらしい。
都市だと、入場の際に記録され、何人が現在存在しているのかを把握しているらしい。
15歳以上だと人頭税、売買時の税、固定資産税、農村部だと年貢か税金って感じで支払う事になる。
但し、冒険者は出入りが多いので、税の支払いは冒険者ギルドが依頼や買取で発生した料金からギルドの取り分と税金を自動的に差し引いているらしい。
そして、未開拓の土地に関しては、特に制限が無い限り、開拓した者の所有となるが、それが何処かの貴族の領土内の場合、その領主に対し、固定資産税を払うか農地の場合は、年貢(又は税金)を払う事になる。
ちなみに、最低税率は国が決め、それに地方税というか各領主が追加する税を払う事になるらしい。
誰の領地でも無い場合は、自由に開拓し、税金も不要らしいが、そんな命知らずは普通は居ないとの事。
王国内でも誰の領地でも無い場所はまだまだ沢山あるらしい。
理由は魔物や盗賊達の襲撃の危険という事だ。
「あ、やっぱり盗賊も居るんですね。」
「ああ、居るな。 俺はこう見えても結構強いから、まあ近場だと護衛無しで行ってるが、普通は護衛の冒険者を雇うんだよ。」
「ちなみに、盗賊や強盗と交戦する事になった場合、過って殺してしまったら、罪になるんですか?」
正当防衛が認められず過剰防衛とか、治療が間に合わなかった場合とかで罪に問われると、堪ったもんじゃないからね。
「ハハハ。大丈夫だ。盗賊や強盗や盗人は基本、街の中でも外でも殺してOKだぞ。
まあ、街の中だと普通は捕らえて、衛兵に渡すのが得策だ。報奨金も貰えるしな。
しかし、旅先だと、殺す。まあ近場の街の衛兵に出せば、報奨金が出るんだが、そこまで連れて行くのが面倒だし、下手に逃げられると、他の旅人や商団が迷惑するから暗黙のルールだ。」
うっへーー、何か人の命が軽い世界だな。
まあ、盗賊共の所業を聞くと、そう言う同情心は消えてしまうけどね。
でもだからと言って、俺に盗賊を殺せるのか?というと出来る気はしないけどね。
「だから、ケンジも、もし盗賊に会ったら、情けは無用だからな。」
とシミジミと言っていた。何か過去にあったんだろうか?
まあ、都市で何か不都合があれば、泉か、別の未開拓地に家でも建てて、ノンビリ暮らせば良いか。
そう考えると、少し気楽な気持ちになれるのだった。
◇◇◇◇
そして、気付けば、4時間程話し込んでいたらしい。
休憩を兼ねて、風呂に入る事にした。
お湯を貯め、入り方を教えると、
「え? 何だよ、男同士なんだから、一緒に入って背中流してくれるんじゃねーのかよ?」
とガバスさんが笑いながら聞いて来る。
「いや、まあ良いですが、一人でノンビリ入る方が良いのかと思ったんですが。」
「いや、実は、慣れないからよ、壊すと嫌なんでな。」
と頬を掻きながら暴露していた。
「ハハハ。判りました。」
という事で、一緒に入る事になったのだった。
風呂場では、ガバスさんが、
「かぁーーー!堪らねぇーな、これは。 くぅーー。」
と騒いでいた。
ピョン吉も、いい加減慣れたのか、風呂を楽しんでいた。
風呂上がりに冷たい氷入りの泉の水を出すと、また大騒ぎしていた。
まあ、氷が珍しいって事もあるらしいが、問題は泉の水で、これはやはり普通の水ではないと言っていた。
ガバスさんは、
「いい加減、驚くのに疲れた……」
と最後にボヤいていた。
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メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/21)
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