第3話 死後の世界2 (改)
少し肌寒さを感じ、目が覚めると、既に辺りは暗くなっており、木々の間から月が2つ見えている。
「ほー、死後の世界は、月が2つもあるのか。」
1つは、黄色い色で、もう1つは青白い色で、その月の織り成すに、絶妙な色彩に思わず感動する。
まるで、イラストのようである。
一頻り感動していたのだが、そよ風にブルッと身を震わせた。
夜風が冷たい。
焚き火をしようと、落ちてる枝を一抱え程、集めて回ったが……さて、どうやって火を点けようか?
タバコを吸わないので、マッチもライターも無い……というか、そもそも服装も身体も違う状況なので、関係ないか。
火種を作るには、木の板に切れ込みを入れて、棒を回して火を起こす方法や、竹に斬り込みを入れて、竹同志を擦り合わせる方法があるのを思い出したが、拾って来た枝は、どれも細く竹は無かった。
――もっと太い木の枝を見つけないとダメだな。
ここでフト腰にぶら下がっている、巾着袋を思い出した。
そう言えば、まだ自分の持ち物を全然調べてないな。
そこで、1つずつ確認してみる事にした。
ズボンのポケットには、特に何も入ってなかった。
上着の内ポケットには、何か折りたたんだ証明書の様な書類ぽい紙が入っていた。
以上。
何だろうな?見た事も無い様な文字なので、何が書いてあるかは不明だ。
ナイフは兎も角、残るはこの腰のベルトの巾着袋である。
取り外そうと思って、手を触れて、思わず声を上げて叫んでしまった。
何が入ってるんだろうか? と思いつつ巾着袋に手を触れたら、いきなり目の前に見知った文字と小さい画像が浮かんだからだ。
文字を読んでみると、どうやら巾着袋に入っている物のリストの様である。
まるで、PCのエクスプローラの様な感じで浮かんでいて、幾つかの切り替えが出来そうなボタンも表示されている。
「へぇー、色んな物が入ってるな。
しかし、本当にこんな小さな袋にこれだけの物がはいってるのか。
どうやって、取り出すんだろうか?」
と既に肌寒さも忘れ、巾着袋に興味津々である。
というか、このリスト、どうやら横にスクロールバーが付いていて、まだまだ下にリストが続いているっぽい。
指で下に動かそうと頭で考えたら、指を動かすまでも無く、リストがスクロールし始めた。
なるほど! つまり思考に反応して動くっぽい。
「お!上に羽織るローブを発見! これを出してみよう。」
と思ったら、目の前に出ていた。
「おおお!!! 出たーー!」
静かな夜の森に健二の声が響きたる。
健二にラノベを読む趣味があれば、気付いていたかも知れないのだが……巾着袋は俗世間で言うのマジックポーチ的な物であった。
早速、目の前に出たローブを羽織ってみると、身体がポワンと温かくなった。
「おー、軽くて薄いけど、これだけで、全身が温かくなったな。凄いぞ。」
と喜ぶ健二。
そして健二はこれに関しても知らなかったが、このローブは温度快適調整の付与がされている国宝級どころか、神話級の一品であった。
あらためて、巾着袋の中身のリストをジックリ見てみると、実に色々な物が入っている。
だが、リストを見ていて疑問が湧いて来ていた。
「うーん、死後の世界なのに、こんな生活必需品とかって必要なのか?
もっと違う感じを想像してたんだけど、意外に俗っぽいというか、下界っぽい感じなんだな。」
何を発見してそう思ったかというと、鍋やフライパン、コンロ、着替え等は兎も角、金貨や銀貨等のお金をリストにを発見したからである。
生前、バブルが弾けて以来、ズッとお金で苦労をして来ただけに、死後の世界でもお金が要るのか……と落胆した訳だ。
思い起こせば、三途の川を渡る時にも必要とかって風習もあったし、死んでも世知辛い物なんだなと、理解したのだった。
健二は、取りあえず、テントを発見したので、取り出してみた。
「おー!凄いな。自分で組み立てるのかと思ったら、建てられたその状態で出て来たぞ。」
と出て来た3人用テントぐらいのテントを見て驚きの声を漏らす。
入り口から中に一歩足を踏み入れ、驚きの余り、思わず一回外に出てテントのサイズを確認し直してしまった。
中の居住空間と、外から見るテントのサイズが、明らかにおかしいのだ。
「あー、これって、あの有名なハ○ポタにも出て来た様なテントだ!
いやぁ~、何か、さっきから驚いてばかりだな。」
まるで、お伽の国に来た様な新鮮さでワクワクが止まらない。
テント内部は、空間拡張が施された、所謂マジックテントで、健二は気付いてないが、実は神話級の一品。
テントには、空間拡張の他にも、遮音(任意でON/OFF可能)や、絶対結界(任意でON/OFF可能)や、温度快適調整が付与されていた。
驚いた事に、風呂やトイレ、更にキッチンまでもが付いて居る。
幾つかの小分けされた寝室が付いており、内部には勿論ベッドや机と椅子等も設置され、照明や冷蔵庫らしき物まであった。
入り口から入ったすぐのリビングには、ソファーとローテーブルもあり、キッチンの横には、テーブルと椅子もあった。
築54年の四畳半に住んでいた事を思えば、これだけで既に天国である。
あまりのぶっ飛び具合に、
「これ、本当に俺が使っちゃって良いんだろうか?
後で怒られないかな? まあ、背に腹は代えられないから、後で持ち主が現れたら、ごめんなさいしよう。」
と思わず手を合わせて頭を下げるのであった。
部屋数を数えると、ベッドルームだけで5つ有り、所謂5LDK+Sと言った感じであった。
そう、驚いた事にキッチンの横には納戸というか、食糧倉庫が付いており、その中には、大量の物資が入ってるぽい。
その食料倉庫だけでも下手な体育館より広く、奥行きが判らない。
ズラッと整列された棚にビッシリと入った麻袋や木箱等に驚いて、中には入らずソッと扉を閉めた。
「やっぱ、ここの食料は黙って使っちゃダメだよな。」
と思わずビクビクしてしまう、あくまでも小市民な健二だった。
豪華な風呂を見てしまった健二は、生前1ヵ月以上、銭湯代さえ無くて、風呂に入って無い事を思い出した。
水道が止まるまで、寒さに堪えつつ、水道の水で身体を2日に1度拭く程度だったのだ。
不思議な事に、何処にもパイプでは繋がって居ない蛇口を捻ると、不思議な事にお湯や水が出て来るのである。
「綺麗に使えば、きっと許してくれるだろう……。」
結局、風呂の誘惑には勝てず、風呂にお湯を溜め始める。
脱衣室を見ると、タオルや石鹸類はありそうなので、使わせて頂く事にした。
「くっはぁーー。生き返るーー!」
と死んだ身(と本人は思ってる)でありがなら、微妙な呻き声を上げつつ、湯船に肩まで浸かり、足を伸ばす。
端から見ると、美少年の台詞としては、絵面の悪い台詞である。
まあ、当然なのだが、ちゃんと頭も身体も洗ったが、垢まみれかと思いきや、身体自体が生前と違うので、垢まみれでもなく、サラッと洗い終わった。
久々の風呂を満喫し、タオルで身体を拭いて、置いてあったバスローブを羽織り、ベッドルームに行って、ダブルベッドより大きいサイズのベッドに飛び込んだ。
なんて事でしょう。この身体を包み込む様なフィット感。柔らかすぎず、最高の寝心地である。
そして、意識を失う様にいつの間にか眠りに就いたのであった。
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メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/21)
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