第12話 動き出した時間
「はい、武黒に隠していたことを謝ります。龍の力を欲した西の諸国の術者達が屋敷を襲わせたのは間違いありません」
月佳姫は武黒の目を見て告げた。沈黙がおりる。無表情な彼から表情は読み取れない。武黒はきっとなぜ隠していたと詰め寄るだろう。俺の今までの努力は何なのかと。月佳姫は覚悟を決めた。
武黒は深呼吸をしてから口をやっと開いた。月佳姫をまっすぐに見つめて。
「いや謝ることはない。俺たちに言えない理由があったんだろ。月佳のことを俺は信じているからな」
だが武黒の目に怒りの色はなく、まっすぐと月佳姫を見つめている。
「武黒……?」
月佳姫は思わず名前を呼ぶ。
「まずは真白を助けるのが先だ。その後、仇を打ちに行かねぇとなぁ」
武黒は不敵に笑った。やっと突き止めた仇。武黒にとって止まっていた時間が動き出したのだ。
§
夜もだいぶ更けた頃、魔女とりゅかは何やら話していた。
「あの娘の体、だいぶ弱ってるわね」
魔女は大きな椅子の肘掛けに頬づえをつき、もたれたままだ。足を組んでいるせいで、はらりと見えてしまっている脚をお互いに気にしていない。りゅかは椅子に座ることもせず、魔女の顔を見ていた。その顔はいつもの穏やかな様子はなく、代わりに険しい表情だった。真白の様子を見て来たらと魔女が投げ槍に言う。りゅかは黙ってうなづくと下がろうとした。
「強い力があると、性格が歪むみたいね」
自嘲気味に魔女は呟いた。りゅかは開けようとした扉に手をかけたまま振り向く。
「
りゅかが顔色一つ変えず問い返す。何を感傷に浸っているのだと言わんばかりに。
「そうね。人の命すら魔術に使えると真っ先に考えてしまう嫌な職業よね」
魔女は最後に今さらかと呟くと、りゅかは扉を開けて、どこかへ消えていった。魔女は、りゅかと交代で入ってきた侍女に何やら指示をした。
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