第10話 妖艶な美女
「月佳姫と、この兄妹に悟られないで連れてくるなんて隅におけない男ね。りゅか」
女性は豪華な金の装飾で縁取られた赤い椅子で頬づえをつきながら嗤う。黒い髪と黒い瞳をしているが、どこか異国風の深紅の着物を身に纏った女性。絹で出来た赤い衣からは思い切り肩をだし、胸の谷間を覗かせている。足を組んでいるせいだろうか。華奢な白い足が赤い衣からちらりとのぞかせる。
りゅかは女性の背後にあるベッドを見つめてから女性に視線を戻した。
「いや、月佳姫はもう気付いたでしょう。それに武黒も勘がいいから大変だったよ」
女性は微笑むと、こっちにいらっしゃいとりゅかを呼ぶ。りゅかは女性を魔女さんと呼んだ。魔女さんは人使いが荒いんだからと言いながらも女性の前に立つりゅか。
「真白に勘づかれるとは思わなかったのね?」
魔女はそう言いながら、右手を差し出した。
「えぇ、真白は僕のことを信じてくれているから」
りゅかは魔女の前でひざまづくと、挨拶代わりに右手の甲に軽く口づける。りゅかは背後にあるベッドに視線をやった。そこには未だに意識の戻らない真白が眠っていた。
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