第593話 神の愛妾
「お待ち申し上げておりました、アマリリス・ウェルウィチアさま。
お噂どおり、世にも稀有なお美しい方ですこと。」
3人組の女の1人が、恭しく礼をした。
その浮世離れした佇まいや、勿体ぶった言い回しは、
昨年のワタリで遭遇した、異界の奥地に居城を構える魔族の旅団を彷彿とさせるものがあった。
――だが、しかし。
3人揃って、長い髪を頭頂ちかくでひっつめに結わえ、
薄衣を重ねた長衣で包んだ痩身、金色の耳飾りに首飾り、腕輪に足輪といった装身具。
帯には小ぶりの湾刀を差し、手には、身長ほどの長さの細い棒の先に金属の輪を連ねた、
杖とも武器ともつかないものを携えている。
「――はじめまして、だよね?
どうしてあたしの名前を知ってるの?」
それもフル・ネーム。
自分でも久々に聞いたわ。
「過ぎ来し方より存じ、お慕い申し上げて参りましたのよ。
貴女さまが”旅”を始められた、その時より。
我らが宗団の希望であり、世界の救済を託された御使い、
それが貴女、アマリリス・ウェルウィチアさまなのです。」
・・・なになに!?、イタい人たち??
でもこれではっきりした。
この感じ、頭の中ヤバい連中だ、って伝わってくる感じ。
こいつらは魔族じゃない、人間だ。
宗団・・・言ってることのヤバさからして、カルト教団の巫女さんとかだろうか。
改めて、3人の異様な出立ちを観察する。
巫女、天からの
彼女たちの衣装は聖なる乙女に相応しい清らかさと同時に、露出が多くきわどいものだった。
「で?
その宗団とやらが、アマリリス・ウェルウィチアさまに何の御用よ。」
「貴女さまは現在、ふたたび岐路に立っておられます。
この地にて一定、”道”を修められた今、早々に入内し、宗団をあるべき方へお導き頂くか、
なおも旅をお続けになるか――その場合、前途は更に困難なものとなりましょう。
各所異見は尽きねども、我々としては、前者をお選び頂くよう、進言申し上げる次第にございます。」
「・・・・・」
ヤバいヤバい、言ってることがヤバいくらいイタい。
何て?? あたしをそのヤバイタい集団に巻き込もうとしてる?
まっぴらごめんだけど。
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