第585話 嘘つきのパラドクス

それからしばらくして、また別の方角の浅ましい考えに捉われて居ても立っても居られなくなると、

アマロックにぶら下がらんばかりにして縋りつき、アマリリスは精一杯の、ぎこちない媚態を見せてかき口説くのだった。


ほかの女に、、行かないでね?

そのためだったらあたしどんな事でもする。

てか・・・今だって、別に大丈夫だからねっ?

したかったら。。


火が出るような恥ずかしさと、それでも口にせずには居られない不安で涙ながらのアマリリスに対し、

アマロックは笑って宥めるだけ、彼女の言葉に答えるようなことはしない。


愛の言葉を紡ぎ出して安心させてくれることも、

それを形にして、この身を炙る火照りを鎮めてくれることもない。


こんなに優しくしてくれていても、魔族は魔族なのだ。

仕方ない、それがあたしが選んだ――あたしを選んでくれた旦那さまなんだから。

いつもどおり、アマリリスは自分に言い聞かせる。

その都度に、ちくりとした胸の痛みは小さくなっていっているようにも、単に痛みに慣れてきているだけのようにも思える。


それにしても、これ(他の女への嫉妬)は別に相手が魔族アマロックだからってわけじゃなさそうだ。

知らなかったな、、あたしって案外重い女なのかも。

あたしが男だったら、こんな女はイヤだ、って思ったかもしれない。


だからよかったよ、アマロックは魔族だから、そんなこと気にしないもんw。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る