第580話 かの若き女

”あれから”まだ2週間かそこらなんだなと思うと、

そしてあと38週?の後には否応もなく生活が大きく変わるのだと考えを巡らせてみても、

信じられないというか、いまだに受け止めきれずにいる。



その日、

アマリリスはいつものように、アマロックにすり寄っていった。

いつも決まって、彼の右肩に額をあずけてキスをねだり、後はされるがまま。

ほんと人に構ってもらいたがるネコみたい、って自分でも思う。


今もアマロックは服を着ているが、アマリリスはここ2ヶ月はほとんど、裸にオオカミの皮を羽織るだけで過ごしていた。

だって面倒くさい、いちいち服を着ても、すぐにまた欲しくなり、あるいは求められ、

その後はだいたい、すごく眠くなってしまうんだもの。


怖いくらいに激しくされて、だけど全然痛くない。

それどころか、すごくイイ♥

ヤりすぎて、いつの間にか骨の位置が変わってました、とかそのうちなるんじゃないかしらw。

それでも、イイものはイイ♥💕


幸福な時間が続いていた。



例によって、アマロックの鎖骨のあたりに頬ずりして、潤んだ瞳で見上げる。

アマロックもまた、金色の瞳でじっとアマリリスを見ている。


このあと自分に行われることを思い描いて、熱を帯びた吐息が漏れた。

そこに言葉はいらない、あたしが人間でアマロックは魔族で、なんてことを考える必要もない――


と。


天地あめつちに生きるものすべからく、かの若き女を祝福するであろう。」


アマロックの口から、教示の一節が飛び出してきた。そんなことを知っているのに驚いて聞き返した。


「えっ? 何??」


「おめでとう。妊娠してるよ。」


「はぇ??

え、何?にん、、、?

・・・うっそでしょーーー!!」


「嘘ついてどうする。大事にしないとね。」


なぜそんなことが分かるのか、いつも不思議だ。

匂いで、とかアマロックは言うけど、それが本当なら、魔族はいったいどれだけ、人間が気づきもしないことを知るのか、気が遠くなる。


しかし――

いや、果たして、と言うべきか。

そのあとすぐ、間欠的な吐き気が襲ってくるようになった。

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