第561話 したらばおぬしどこぞに行き

「それではっ!

”アーニャ救出!のついでに月と星も取り戻しちゃえ大作戦”

作戦会議をはじめますーーm(_ _)m」


世界を押し包む闇と静寂をものともせず、スネグルシュカの開会宣言はわんわんとあたりに鳴り渡った。

アマリリスも勢いで”おぉーー”と乗ってみたものの、周囲から返ってくる沈黙に、いたたまれない気分を味わった。


「そもそもなんで、にっちもさっちも行かなくなっちゃったのぉ??

それはですね。


①アーニャを救い出すには、月と星を取り戻さなければなりません!

②月と星を取り戻すには、ウェージマ妖女をとっちめなければなりません!

ウェージマ妖女をとっちめるには、アーニャを救い出さなければなりません!

という具合に①〜③が三つどもえの堂々巡りになっちゃってて、いくらぐるぐるしても先に進まないからなのですぅ~😿


なので!”アーニャ救出とウェージマ妖女とっちめを同時にやっちゃうぞ😽でもって月と星を取り戻すのだぁ”

で、いきたいと思います!


そんな無理ゲーだれがやんのさ?😿って思っちゃう??だよねぇ~~

そこでゲームチェンジャーになるのがっ!

でけでけでけでけ……お待たせしましたッ!レヴコーくんの登場です!はくしゅーー!」


黒子か人形使いよろしく、スネグルシュカの後ろにのそっと突っ立っていた男が前に出てくるのを、アマリリスはまじまじと見つめた。


王子じゃん。

前髪もドジョウひげも、濃ゆい顔つきもガチムチも、まんま前髪王子じゃん。

レヴコーが王子さまだったんじゃん。


スネグルシュカは、てへぺろ、という擬声語が聞こえそうな調子で弁明した。


「今回、キャストが足りなくてさ~~、名にしおう首府みやこで使いすぎちゃった。

アマリリスお姉さまにおかれましても、一人二役?三役だったかな?

こなして頂いてありがとうござりましゅる~~😸」


きゅん。もぉ、しょうがないなぁ❤


遅れ馳せながら登場した渦中の人、レヴコーは、既出ではあったが今や王子ではなかった。

ド派手な長上衣ジュパーンのかわりに、質素な、こざっぱりとしたルパシカ、

帯には長剣のかわりに手斧、そしてのみややっとこといった工具を差した袋を提げている。

仕事熱心な大工であるようだった。

そう思えば、突っ立っているだけでちょっとした熱源になりそうな筋肉ダルマぶりにも、好感が持てるというものだ。

口達者な方ではないらしく、紹介されてへこりとお辞儀したあとは所在なさげに口を噤んでいる。


「更にそもそも!なんでウェージマ妖女は月と星を隠したのかーー?それはね✨

愛人であるビサウリュークの、逆恨みが発端なんですってww!プッ、だっさ。


レヴコーくんが建てた新しい教会の出来映えはとても素晴らしくて、ビサウリュークはすっかり村に寄りつけなくなっちゃいました〜〜⭐

腹を立てたビサウリュークは、世界を真っ暗にしてやれ、レヴコーに道に迷って困らせてやれと、

ウェージマ妖女に頼んで月と星を隠したというわけーー。


だから月と星が戻れば、レヴコーは道を見つけて、自分の願い通りの場所に行ける、のじゃぞっ。

これレヴコーとやら、皇帝陛下のご下問と思って答えるがよい、したらばおぬしどこぞに行き、何を願うのじゃ?

ヤトロファ人の金銀財宝の在り処かぇ?名にしおう首府みやこの王座かえ??」


対してレヴコーは、返答を用意してあったかのようによどみなく答えた。

その言葉に芝居がかったところはなくて、彼の実直な情熱がにじみ出ていた。


「財宝だの首府みやこだのいらねぇ、

皇帝陛下がご下問でもおれは即答するね、”オクサーナを奥さんに!”って。」


「はい、よくできました!

聞きました??オクサーナさーん!

>はぁい🙋、

ってところに実はいらっしゃっています!」


アマリリスは小路の脇によけ、背後の人物に場所を譲った。

百人長ソートニックの邸から連れ出してきた、愁いと麗しのパンノチカ令嬢に。

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