第559話 Bad end in dead end

暗闇に包まれた禿げ山を、アマリリスは半ば手探りで登っていった。

一切の光明を失った世界はこれだけ暗いものなのか、

あるいは、鳩の身体の名残で、夜盲ぎみになっているんだろうか。


この世界であたしが、いかがわしい品行のウェージマ妖女なんだとして、

空の月や星を取り戻すとか、明かりになる火を灯すような魔法は知らない。

この間の砦に行けば、アーニャを元に戻す手掛かりが何かあるんじゃないかと思ってやってきたが、

こう暗くては、砦どころか自分の足元すらおぼつかない。


やがて闇の奥に仄白く弱々しく、フワフワと揺らぎながら浮いている明かりが見えてきた。

人魂!?ではなかったが、神秘現象スピリチュアルに違いはなかった。


「こんにちはっ!」


「こんにちは、てかこんばんわ。

そういえば地味に久しぶりだね。」


「うん~~、あのままうまくいくなら、ボクもう出てこないつもりだったんだけどね。

厄介なところに迷い込んじゃったね、Bad end in dead endオワタの袋小路だよ~、ここ。

こうなっちゃったら、いくら待っても、これから何をしたってこの夜は明けないや。」


スネグルシュカは、光明のただ一つも見当たらない、黒一色の深淵を見上げ、

決着の見えたチェス盤の解説のように、あっけらかんとして言った。


「えぇっ、じゃあどうすんのよ。」


「むふん。

そういう(=夜が明けない)こと期待している恋人たちも大勢いるだろうしぃー、いいんじゃない?

ビサウリューク[仮]喚んじゃう??」


「そういうのいいからさ。

何か方法はあるんでしょ?」


「にぇっと。

ら、もうお手上げです。」


「そんな。。」


「なのでっ、前に、

オワタ小路に踏み込む前まで巻き戻して、筋書きプロットを辿り直すのだーー。」


「え!?、そんなことできるの??」


そんな、もし〇〇が〇〇だったならBack to the *****的なこと?

夢だから何でもアリ、ってことなのかな。


「にぇーっと!

夢だからアリ、なんて言ってるからいつまでも叶わないの!

世界線を捻じ曲げて、筋書きプロットを繋ぎ直すのだぞーー。

願いを叶えるには、代償が必要です。」


「代償。。」


「そ、代償=それを願う人の”いちばん大切なもの”、です。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る