第532話 姉と雪むすめ#2

高慢のパンノチカ令嬢の役どころが思うにまかせず、途方に暮れるパンノチカ令嬢に、

スネグルシュカのほうが半べそをかきそうになりながら手引して、やっとふさわしいお題を設定させた。


「やれやれっ、世話の焼けるパンノチカ令嬢だったなぁーー。

でもやったね、これでレヴコーがお題をクリアすれば、パンノチカ令嬢はレヴコーにベタ惚れ間違いなしっ!

そしたら、ビサウリュークのために2人の恋路を邪魔しようとしたウェージマ妖女の面目丸つぶれ、

月も星も彼女の胴乱を逃げ出して夜空に戻りーー、ワーニャの呪いも解けるであろ~~。」


パンノチカ令嬢の邸を出て、暗闇の森をスキップしながらスネグルシュカは言った。


「でも、、」


ハリネズミを抱いた少女は不安そうに尋ねた。


「レヴコー?にできるの??

おそれ多くも、女帝陛下の、一番大切になさっているものだなんて。」


高慢のパンノチカ令嬢に出させた難題は、

はるか遠く、3の9倍の国々のかなたの首府みやこに住む女帝のもとを訪れ、女帝からパンノチカ令嬢への祝福の品を貰ってくること、というものだった。

何を貰ってくるかは問わないが、そのかわりそれはただ女帝の持ち物であるというだけでなく、女帝が一番大切にしているモノでなければならない。


無理難題としては申し分ないが度を越しているのと、

当のレヴコーが、一向に姿を現す気配がなかった。


「だーいじょうぶ、だいじょうぶ。

無理ゲーなほどオッケー👌

そしてレヴコーははなからあてにしてないよーーん。

無理ゲーはボクたちで攻略クリアして、レヴコーに花を持たせてやるのだーー。」


「えっ、あたしたちが!?」


ワーニャの運命がかかっているのだし、お膳立てや、手伝えることなら何でもするつもりだったけど、

まさか自分たちが主力だとは思わなかった。

なおさら無理ゲーでは。


「まず、"3の9倍の国々のかなた"の首府みやこなんて、

あたしたちだけで、どうやって行ったらいいの?」


「だーいじょうぶ、だいじょうぶ。

3の9倍の9倍のかなただって、"これ"に乗ったらひとっ飛び~~。」


2人の足元、大地を厚く覆った雪が盛り上がって砕け散り、中から純白の毛皮に覆われた、巨大な獅子が現れた。

その背には、2対の翼が生えている。


「さっ、振り落とされないように、たてがみをしっかり掴んでおいてねーー。」


スネグルシュカとアーニャ、ハリネズミと化したワーニャをその背に乗せ、白獅子は軽々と、天高く舞い上がった。

月も星も姿を隠した闇空に、煌々と輝くその姿は、ひとすじの彗星のような軌跡を描き、

地上の森や野原、凍りついた湖、雪に覆われた山々といったものを束の間照らし出しながら、はるかなる首府みやこを目指して飛び抜けていった。

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