第521話 雪夜のまやかし#2
”たしか、
「そう、
よくできましたっ!」
少女はそう言って、ミトンをした手で拍手を送ってきた。
とはいえこの状況には、名前以外にも色々と確認することがありそうだけど。。。
アマリリスはまじまじと、頭の天辺からつま先まで、相手を眺め回した。
白い
肌は透き通るように、それこそ雪のように白い。
瞳とシューバのボタンは氷河の青さで、髪とシューバの裾飾りの毛皮は夕日を浴びた雪の金色。
おさげに結った髪の上につけた銀の
10才になるかどうか、という印象のあどけない、とても可愛らしい顔立ち。
魔族、というのが妥当さでは最たる推論になろうというものだが、、
アマロックが
この少女が「
前者、現実の魔族の呼び方は、あえて名づけるとしたらそうなるよね、という符号にすぎないわけで、
人魚の、特に母親の方みたいに、その呼び方が適切なのかと言われたら答えに困るようなケースもあるし、
人間が拵えてきた
ところがこの少女ときたら、テンプレそのままのスネグルシュカというか、
ラフレシア人であれば誰でも、そして外国人でも、ラフレシアの文化に接点があれば大概は知っているであろうあの民話、
冬の大雪の晩、子どものいない寂しさを嘆く老夫婦のもとに現れ、夏至祭の篝火が焚かれる夕べに消え失せてしまう悲しいお話の、
心優しいヒロインのイメージにぴったりと重なり合い、他の何者かであるなんて考えようもなかった。
昔、ラフレシアに行商に行った父が、お土産に買ってきてくれた絵本のスネグルシュカが、ちょうどこんなフォルムだった記憶がある。
自然が芸術を模倣する、なんてカッコつけ過ぎでキモい言い回しもあるけれど、
この子が異界の産物だというなら、それはもう
自然がそんなことをするなんて、ちょっと考えられない。
文字通り、絵本の中から飛び出してきたような造形と登場のしかたもまた、実在の獣である魔族には似つかわしくない非現実感をまとっていて、
おとぎ話の中の〇〇の精、たとえば雪の精なんてものがもし姿かたちを得てこの世界に現れたら、ちょうどこの少女のようになりそうだと感じられた。
魔族じゃないし、もっとあり得ない可能性として、スネグルシュカのコスプレであたしを驚かせにきた人間でもない、とすれば、
考えられる可能性は2つ。
①昔話の絵本に描かれた、
②あたしは今、夢か幻覚を見ている
「①なら、今までに天使とか悪魔とか、もっとメジャーなスピリチュアルを見ててもおかしくなさそう、でも見たことなかったよね。」
スネグルシュカは両手を腰に、つま先と踵で軽快なステップを踏んで粉雪を舞い上げながら、嬉しそうに言った。
・・・この子、
「そう、あなたの心を読んでるの。
とすると②の可能性が高そうだけど、どうかなぁー?
夢を見ているときにこれは夢だ、って気づくとは限らないけれど、
起きている時は、自信をもってこれは現実です!って言えるよね。
今はどっち?」
そう、この感じは現実だ。。
「だとすると、もぉーっとコワい可能性③、
あなたは、ぼっちの寂しさでアタマがおかしくなっちゃっている。
ボクは夢か幻覚なんだけど、あなたには現実との区別がつけられないっ!」
スネグルシュカは白い歯を見せてそう言い切り、
このフォルムだから許されるお行儀の悪い仕草、アマリリスに向けて人差し指をビシリと突きつけてきた。
「・・・まぁ絶対ナイとは言わないけどさ、キミが言うとあんまコワくないよね。
ってか、”ボク”??
え、男の子、、、?」
「さぁー♬、
ボクっ娘の女の子か、
男の娘なボクか、どっちでしょーー??」
きゅん。
やーーん、どっちかなんて選べない❤
スネグルシュカの『正体』が何かなんて、一瞬でどうでもよくなった。
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