第477話 群族の再会

ツンドラの野に刻まれた涸れ沢では雪もあらかた溶け、トヌペカとマフタルを先頭にした6名は砂礫を踏んでそこを遡っていった。

左手に見える、野の緑と雪の白のまだらになった小高い丘を下ってくる者の姿があった。


単独行動ということは、白拍子シパシクル黒葛連ウパシクルとは考えにくい。

新手の魔族か。


トヌペカはえびらから弓を取り出し、毒矢をつがえた。

人影は彼らに気づいて、身体を大きく左右に揺らしながら丘を駆け下ってくる。

群族の大人たち4名は、命からがら逃げてきた魔宮から遣わされた悪霊の化身だと言っておののき、てんでに祖霊の加護を祈った。


次第に弦を強く引き絞りながら、荒野の遭遇に対峙していたトヌペカは、

不意にアッと叫んで、弓矢をえびらに放り込むと、仲間に向かって大慌てで”叫び”、大きく手を振りながら駆け出していった。

マフタルが慌ててその後を追い、ようやく事を飲み込めた大人たちも、のろのろと走り出した。



すっかり諦めていた我が子をその胸にひしと抱き、とめどなく涙を流す老母も、もちろんテイネ自身も、

彼らの仲間の全員が、群族に久々に訪れた吉事を喜び、再会を祝い合った。


3人の大人たちが輪になって、祖霊への感謝を捧げる舞いを踊るのを、トヌペカが満足そうに見守っていた。

マフタルもしばらく笑顔でそれを眺めてから、そっとその場を離れ、丘の向こう、涸れ沢の源流の方角へと下っていった。

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