第453話 伽藍の深奥#1
異界の王権に属する3名は、ササユキ女王の案内で飴色の伽藍までの道を辿り直し、
先ほどは迂回した闇の口、地下へと続く白亜の階段を下りていった。
階段の内部は、階段そのものが放つ燐光の明かりによって、入り口からそう見えたほどの暗闇ではなかったが、それでも、周囲の形の判別は難しい暗さだった。
闇に浮かぶ段をとんとんと下っていく、仄白い少女の霊のようなササユキの姿を追って、黒衣の2人は形を得た影のように進んでいった。
「氏より育ちということは」
闇の中に、アマロックの声は死者の呼び声のように響いた。
「兵卒として育てれば兵卒に、
播種者として育てればやがては女王やその伴侶となる。
なおかつ、育ったあとに変更はきかないということか。」
「そのとおり。
だから、この
動きやすいんだけどね。」
「子ども一人ひとりを、兵卒にするか播種者にするか
それは誰がどうやって決めるんだ。」
「――それはワタシの範疇外の専決事項だ。
知りたきゃウチの連中に聞いてくれ。」
そう返したササユキの言葉は珍しくぶっきらぼうで、どこか寂しげにも聞こえた。
「
「事実上、それもワタシに権利はないよ。」
闇に伸びる階段の先に、円形の踊り場が見えてきた。
その縁に沿って柱のようなものが立っているらしく、楕円の仄明かりを縦断する影となって上方に延びている。
ササユキは階段を下りきり、仄明かりの踊り場の中央に立った。
アマロックは数段を残して階段の途中で立ち止まり、共に足を止めたアマリリスはしげしげと、儚い光に照らし出されたササユキの姿を眺めた。
踊り場から先に続く階段や通路は見当たらず、一面の闇に浮かぶ
同時にそこは、女王の支配が及ぶこの伽藍の最奥部でもあった。
「さて、君の欲しがってたカードがここにある。
今は伏せてあるが、最後の用件が済んだら開けてみせよう。
ここなら問題あるまい、赤の女王からの伝言とやらを聞こうじゃないか。」
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