第450話 赤の女王の宣託#2
”条件がある”
「伺おう。」
「何につけ、切り札は確保しておく主義でねぇ。
和平とやらが悪くない話というのはわかった。
しかしどうも赤の女王の腹のウチが読めないとあっては、保険となる強いカードが必要だな。
異能王くん、キミのことだよ。
赤の姫君には悪いけど、今後は彼女だけがキミの
キミは今後、何を於いてもまずこのワタシに尽くしてもらうことになる。」
なッ、なんだとぅ❗❓
「買いかぶり過ぎだろうと思うが、まぁそれはそちらの勝手だ。
ちなみに”尽くす”とは一体何を意味するんだ。
白の女王様に一生ご奉仕しますと、父の名にかけて誓えばいいか?」
「そんな無意味な要求をするもんかね、人間じゃあるまいし。」
ササユキはひとしきり、愉快そうにからからと笑い、ぴたりと止めた。
「
キミと、赤の姫君を含めて7頭だそうだな。
このうち4頭を潰せ。
どれを残すか、選択は任せる。」
――つまり、3頭にすることで、自ら逃走の機会を放棄しろと言っている。
魔族らしい、合理的な契約方法だ。
だが、ササユキ女王もまた、アマロックが仕組んだ罠、偽の数字に踊らされている。
アマロックは帰れるのだ、その3頭の組合せ次第では。
そしてそこに、アマリリスは含まれていない。
「その替わりと言っては何だが。ウチの旅団を受け取ってはくれまいか。
通名ではなく、真の王としてこの城砦に迎えようではないか。
あらゆる自由を認めるのはもちろん、キミの指揮にこの大城砦の全兵士が従うのだ。
実際にはワタシ自身に人事権はないんだが、キミほどの軍才、ウチの連中ども三顧の礼で、総帥として迎えるだろうさ。
――おっとこれは失礼な物言いだったかな?許してくれたまえ。
和平だったかね。
何にせよウチの旅団に利益のあることはワタシも大歓迎だよ、
ありがとう。ともにこの城砦の栄えある未来を築こうではないか。
キミにとっても、どう考えても7頭のオオカミの兵長どまりよりも利益の多い立場が用意されることになるわけだ。
悪い話ではないと思うがどうだい。
そしてキミがこの条件を蹴るならば、それはキミ自身が自分の提案を信じていないということになるよな?
そうだよなぁ?」
アマロックはすぐには返事をしなかった。
そして、黙ってアマリリスを見た。
その目は静かで、アマリリスの顔色をうかがうような気配はなかった。
アマロックが自分に意見を求めてくるようなら、アマリリスは返事を決めていた。
あなたが良いと思うようにして、と。
しかし、アマロックは何も訊ねようとはしなかった。
同じく静かなアマリリスの視線のうえに、何かを確認しただけだった。
アマロックが、仲間を殺す。
サンスポットか、アフロジオンか、ベガorデネブorアルタイル、そしてあたし、
そのうちの4頭、、そしてその4頭が誰になるかはもう決まっている。
そんなひどい話があっていいものかと思うけれど、
人間の直感では理解できない、でもよくよく考えればおそろしい合理性でとんでもないことをするのが魔族だ。
昨夜のアマロックは、3頭で逃げるつもりも、ここの王座を狙うつもりもないようなことを言っていたけれど、
この無茶苦茶な展開も、きっとアマロックとササユキ女王の間では至極まっとうな取引なんだろう。
そうじゃなきゃ、ササユキ女王もそんな提案を出してきたりはしないはずだ。
でも、あたしは人間だからそこまで冷静に物事を判断できない。
もう、ついていけないのかもしれない。
アマロックの心に触れたい、人間か魔族かなんてどうでもいい、殺されてもいいけど理解したい。
こんなことなら、昨夜、アマロックが訊いてくれた時に。。。
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