第448話 女王の居城#2:城砦の由縁
「さて。
それでは、異能王からのありがたいお言葉を頂戴しようか。
なんでも、
全員が着席したところで、ササユキ女王が切り出した。
相手が女王ということで相応の敬意を払っているのか、アマロックにしては恭しい、しかし相変わらず感情の読めない調子で魔族は応じた。
「赤の女王の前に、白の女王について少し話そうか。
ササユキ女王の生い立ちと、この旅団と城砦の成立について教えてほしい。」
「は?ワタシ??
まあいいけど。
異能王も知っているのだろう?
ワタシたち”播種者”は、国許を出てまずは連れ合いを、その次は自分の領地を探すところから、自分自身の生が始まる。
もっとも、その2つを達成できるのは10人に1人いるかいないかだがね。」
「ああ。知っている。」
「運良く自分の領地を手に入れて、そこに根を下ろしたら、
その次は子作りだ、城作りだ、国造りだと、おおわらわさ。
1世代目のコドモたちが生え揃って、使い物になるまでが大変なんだ。
ウチの規模の旅団や城砦を持てるのは、100人に1人もいないだろうねぇ。」
「そうだろうな。
あんたは類稀な成功者というわけだ。」
「いかにも、と言いたいところだが、単に運が良かっただけだよ。
自分の城を持てずに斃れていった姉妹たちより、ワタシに何か優れたところがあったとは思わんね。
成功の甘露よりも失敗の苦汁を多く啜ってきた、リベンジ女王でもあるのさ。
最初は、同郷の姉2人と3人で、別の場所に城を構えてたんだ。
コドモたちも増えて100人ぐらいの規模までは行ったんだが、乗っ取りにあってね。
姉たちも、コドモたちも皆死んで、ワタシ一人でこの山に逃れてきて、Re:ゼロからやり直しの女王生活さ。」
「・・・」
ササユキ女王の身の上話に、アマリリスは労いの言葉をかけたくなった。
人間とは異質な魔族であっても、その心身に負った辛苦は、容易に想像できるものだった。
「ワタシが運が良かったのは、乗っ取りを生き延びることが出来たこと、
そして2回めの城作りは、1回めの経験を生かしてうまく立ち回ることが出来たことかな。
まあざっとこんなところだ、ありきたりな
今は悠々スローライフだよ。」
「その、1回目の城を乗っ取ったのが黒の旅団か。」
「ほぉ。どうしてわかった?」
ササユキ女王が感じ入った様子で尋ねた。
「お互いに相手をよく知っていると思ってね。」
黒の旅団との間にそんな因縁があったとは。
胸が痛むとともに、アマリリスは不安になった。
その黒の旅団との和平を、アマロックは進めようとしている。
ササユキ女王の遺恨が、妨げになったりはしないものだろうか。
「
人間はややこしいことを考えるなぁ。
強いて言えば、あれ以来ワタシが変わったとしたら、我が子の身を強く案じるようになったことかな。
乗っ取りの時、はじめての
気づいたのはその時だよ、みんな、ワタシのかわいい子どもたちなんだってねっ。」
サロンの奥から、湯気の立つカップを載せた盆を持って現れた、エプロンドレスの少女と揃いの給仕服の少年を愛しげに眺めながら、女王は語った。
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