第442話 赤の女王の姿を見たものはいない#1
今日もほとんど身動きしない5頭のオオカミに、いつもこっちの出方を窺っている感じがウザいマフタル、何食わぬ顔で草を食んでいる鼻長駒の母子。
ファべ子と、いつも彼女にぴったりくっついているあの少年、昨日牢屋から連れ出してきた4人のキリエラ人。
やがて、刺青の女も外出から戻ってきた。
・・・賑やかになったもんだ。
サンスポットのそばに畳んで残していったオオカミの毛皮を取り上げたが、こうも衆人環視の中、今着ている黒ローブを脱いで着替えるというのは抵抗がある。
意識しているせいか、なんだか今日は(マフタルだけでなく)みんながこっちの様子を気にしているような気がする。
そんなことを気にするわけもないアマロックもまた、黒装束に身を包んだままだった。
到底、好みのファッションとは言い難いものの、ここは異能王サマの方針に従っておこう。
アマリリスは緑の箱庭の天井を支える柱の一つを背もたれに、その根元に腰をおろした。
今日は、外は晴れているというのがよく分かる。
天井のあちこちに
ちょうど風に吹かれる木漏れ日がそうであるように、光の粒の一つ一つは不規則に、震えるように明るさを変化させ、それに応じて床の光の円も、雨だれを受ける池の水面のようにさざめいていた。
睡眠不足のところを起こされ、
アマリリスはまだはっきりと覚醒していないような、頭がぼうっとする感覚がしていた。
けれどそのまま眠りに落ちるというわけでもなく、光のさざなみに
・・・・・近くに、
ギリギリ見えない視界の外あたりから、じっとこちらを見ている。
しかしそちらに意識を向けると、その存在は無数の粒子に散り散りになったようにかき消え、こんどは反対側の視界の外から気配がしてくるのだった。
「そりゃあムリだよ、赤の女王の姿は、誰も見たことがないんだもん。」
バハールシタが、どういうわけか深い同情を見せ、慰めるように言った。
なんでそんな目であたしを見るのよ。
ほんとうは、ほんとうに可哀そうなのはあんたなのに。
「なんで、ってどうして?
逃げたら、
そうね、
「ほんで
おそろしい御方や、まるで魔王どすなぁ。」
あれ、なんで
そっか、もう和平が成立したんだっけ。。(そうだっけ??
「せやけどな
❓ (そんなこと言ってたっけ、、
「それは赤の女王はんの本心どすか?
ほんまの狙いは、他のところにあるのやおへんか?」
「・・・どうしてそんなこと言うの?」
薄暗い、はっきりしない影の姿のバハールシタが、アマリリスの心を代弁するように、
怪談を聞かされた子どもが半べそで大人に
”そうよ”
アマリリスは重たい舌を動かすのに苦心しながら、バハールシタに加勢した。
”赤の女王でないとしたら、それは、誰の意志なの?”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます