第429話 赤の姫君の待遇改善#2

出かけて行ったときよりやたらと仲間を増やして戻ってきた赤の姫君の徒党パーティに、トヌペカは目を丸くした。

アマリリスに至っては、気を良くして鼻長駒の背に横乗りになり、従者よろしくマフタルに手綱を引かせて現れた。


{テイネのおばちゃんたちまで。どうしたの??}


{あちらのお嬢様が、白拍子シパシクルに頼んで出してもらったの。

お礼を言っておいてね。}


{は?なんであたしが。

ってか言葉通じないでしょや}


本人たちを目の前にそんなことを言うくらい、トヌペカは群族の同胞を好いていなかった。

いつもいつも、ユクに面倒事を押し付けて、自分は泣き言ばかり。

今だって、テイネの老母はトヌペカとテイネ[仮]に恨みがましい目を向けるばかりで、お互いに再会を祝う気持ちなんてさらさらない。

それならば監禁されててくれて一向に構わなかったのに。

そのほうがユクを独占できるし。



いや、今は群族なんてどうでもいいんだった。

トヌペカには一刻も早くユクに報告したいニュースがあったのだ。


{ついさっき、白拍子シパシクルが探しに来てたよ。

イノウオウが、ゴキカンだってさっ。}


{そう。早かったじゃない。

どうせまたとんでもないチートを連発して、無双して帰ってきたんでしょうね。}


ここ数日城砦を湧かせた武勇伝にいささか食傷気味のユクは、皮肉混じりに言い捨てた。


{そうでもないらしいよ。}


トヌペカが、近年まれに見せる満面の笑みで、含みを持たせた言い方をする。


{え?どういうこと。}


{ふふっ。だってさ。

ざまぁ!}

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