第422話 異能王の戦場#3

巨躯兵の戦闘力は、操縦する長手の技倆によるところが大きいとは言え、1体が2体の敵を相手に打ち負かすのは、相当の実力差を要する。

これが1対3となれば、まず勝ち目はない。


しかし相手は、こちらの兵を長手から奪い取る、戦慄の異能を持つ渠魁、必勝のために惜しむ手段はない。

守護鎮台はこの捕物のために、敵1体につき4体、合計で実に24体の巨躯兵を投入していた。

そしてそこまでしても、格闘戦が分散し、24体の制御を順繰りに奪い取って個別撃破されるような戦局に陥れば制圧は危い。

そうならないためには、一気に敵兵全員を制圧し、何よりも白の渠魁の息の根を止める必要があった。

幸いにも、敵兵は当初見込みから2体減っている。


城壁を埋め尽くす黒い雪崩となって向かってくる敵に、白の渠魁とその配下の兵はトビムシのように爆ぜて、城壁下の斜面まで後退した。

そこへ黒の旅団の巨躯兵が殺到する。

1体の白の巨躯兵が捕まり、そこへ更に2体の黒の巨躯兵が、暴漢を取り押さえる警邏のように押し寄せ、

白の巨躯兵を中央にして揉み合いの様相になった。


激しい競り合いに、双方の装甲の突起部が破損し、白と黒の紙吹雪のように舞う。

しかしそれによって致命傷を与えられるわけもなく――

白の巨躯兵に向かって懸命に体を押し付ける黒の巨躯兵の胸、龍骨状に突き出た装甲の内側から、ひょっこりと小さな顔が現れた。

その顔だけ見ると兵卒と大差がないが、顔つきが幾分丸く、頭部を護るティアラ状の兜は申し訳程度の大きさで、髪飾りのように頭頂部にちょこんと載っていた。


落雷のような轟音とともに、3体の黒の巨躯兵、そして白の巨躯兵の体が消し飛び、巨大な火焔の柱が立ち昇った。


残り、敵3:味方21。

守護鎮台は無感動に、戦況を計数していた。

破壊力では比類ないものの、動作が鈍重であるために、接近戦で用いられることは多くない自爆兵と、

格闘戦に特化した巨躯兵の組み合わせは、極めて高価な代償とはいえ、白の渠魁に伍する戦力と言えそうだった。


こちらの戦法を知った敵は、接近戦の回避に転じた。

逃げ回る白の巨躯兵に追いすがる黒の巨躯兵、その先頭の2体の目に赤い光が宿り、

後続の同軍に掴みかかる。

同時に、制御を奪われた2体は爆発し、巻き添えで更に1体が大破した。

これで3:18。


程なくして、黒い軍勢は1体の白の巨躯兵を捕らえ、処理した。

2:15。

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