第417話 マフタル、行くよ
意志を持つ化け物城砦であってもそこに働く物理法則は城外と同じ、基部は重厚に、上層は軽く作られることになる。
樹洞のバルコニーから見回した感じでは、上の方は
それでは、屋外に出れたとしても脱走にはつながらない、羽根でもない限り周囲の岩山に移動することはできないだろう。
抜け道を探すとしたら、下だ。
「マフタル、行くよ。」
アマリリスは当然の義務を要求するように言って、下りの階段を探して歩き出した。
制限つきにせよ行動の自由は手に入れているが、
気づかれないようにするにはどうしたらいいだろう・・・と、彼女には不向きなたぐいの考えに頭を悩ませていたアマリリスだったが、
意外なことに、二人についてきたのはあの刺青の女だけだった。
だけだったとは言え、なぜこの女が??
アマロックとはまた別の方向性で底知れない、アマリリスがこの世で2番目ぐらいに苦手とする
自分では認めたくない怯えの感情を振り切るように、歩調を早めたアマリリスにマフタルは慌てて追いついた。
女は、悠々とした足取りを崩すこともなく、一定の距離を置いてずっとついてくる。
歩き続けながらアマリリスは考え、逃げ切れないと観念したというわけでもなかったが、歩をゆるめ、やがて足を止めた。
女も一定の距離を置いたまま立ち止まる。
アマリリスは上目がちに、しかしじっと女の黒い瞳を見つめた。
そのみどりの眼差しに、なめし革のような女の面にもかすかな表情が生まれたように見えた。
初対面から続いた最悪な印象、言葉が通じないってレベルじゃなく意思疎通の困難な言語、さっきのアマロックの一言でにわかに加わった警戒、
といったものはあれど、この女は、この悪夢の迷宮にいる数少ない人間の一人なのだ。
抜け出したいなら、ずっと反感を持ったまま、関わり合いを避けたままでいることが賢明と言えるだろうか?
気に入らなくても、言葉が通じなくても、人間同士なら助け合えることがあるんじゃないだろうか。
アマリリスは拳をギュッと握り、女の方に足を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます