第403話 赤の姫君ご一行:始原女王とは
「その『女王』さまが、この城砦の支配者ってわけ。」
湯からあがり、すっかりツルツルになった肌を、ヴァルキュリアに与えられたタオルで拭いながらアマリリスは訊ねた。
再び彼女たちは怪訝そうな顔をする。
「シハイシャとは何か。」
「何って、、支配する人。
この城砦で一番エラくて、みんなその人の言うことを聞いちゃうみたいな。」
そういう絶対的な権力を持った君主に支配されているのだとしたら、
ヴァルキュリアの魔族らしからぬニンゲンっぽさ、自らの命さえ
しかし、
「当該せし者、当城砦に見出すこと
「・・・」
(支配者が)いない、という回答は予想外だったが、ヴァルキュリアがそう言うならそうなんだろう。
魔族は、マフタルみたいなのは特殊な例外として、余計なことは言わない。
彼らが口にするのは身も蓋もない真実か、塗り固めた嘘のどちらかであって、中間はない。
そして後者だとする理由はみつからなかった。
そうだとしても、
「だったら、どうして・・・?」
声に出してから、アマリリスはその先の言葉を躊躇った。
アマリリスがヴァルキュリアに訊こうとしていること、
彼女たちの行動の意味や目的といったものは、人間が発明した道具としての概念にすぎない、
この世界や宇宙そのものに、究極の目的のようなものは存在しないのだ、とクリプトメリア博士は言う。
だとしたら異界の住民にそれを尋ねるのは、文字通り”無意味な”問いでしかない、、のか?
一考し、アマリリスは自分の内の躊躇を打ち消した。
宇宙に究極の目的は存在しない。
ヴァルキュリアの旅団に支配者は存在しない。
存在しないものにいくら思いを馳せてもナンセンスな空想、それはそうだろう。
しかしその”道具”としての問いを使って、人間が世界を理解できることもあるのだ。
なぜキュムロニバスはあれほど巨大な群体を作るのか?
それは、谷を跨げるから。
なぜオシヨロフのオオカミ群は、行方不明の同郷のアカシカの群に執着するのか?
それが、オシヨロフに帰り着く最も可能性の高い手段だから。
彼ら、キュムロニバスに至っては脳もないような原始動物が、意味や目的を感じているかとは関係なく、それを問うことで人間が異界を理解できることも多々ある。
ヴァルキュリアの魔族らしからぬ異様さ、これもきっと、理解可能な意味に裏打ちされているはずだ。
「・・・
どうして、
それなら何のために、あなた達は戦っているの??」
「
貴下に於かれてはさに非ずや。」
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