第401話 赤の姫君ご一行:操車階層の巨獣
円筒形の吹き抜けを巻いて、
アマリリスとお付きの
吹き抜けの天井は、透光地下茎植物のレンズを集めた照明がほぼ全面を埋めていたが、運んでくるのは既に白夜の薄明かりで、通路の照明は、光るキノコによって
傘の内側の
そういうキノコが、壁と天井の間に等間隔で開いた窪みから、5~6本が一株になって顔を出し、黄緑色の妖しい光で通路を照らしている。
光と影の渦巻きに吸い込まれるようにして吹き抜けの底につくと、二重螺旋の通路と直交して伸びる横穴を進んだ。
そこは人の背丈の2倍ほどもある、正円に
アマリリスは、さっきの螺旋通路を何周もしたせいで、自分が目を回しているのかと思っていたが、
やがてこの円筒形の通路自体の壁に、ちょうどライフルの銃身の内側のように、螺旋状の溝が幾筋も刻まれているせいだと気づいた。
アマリリスは不思議そうに、壁と天井の区別がない曲面にそって視線を一周させた。
床が、丁寧に並べられたペーブメントになっているのは理解できる。
湾曲した床では歩きづらいだろうし。
しかし、壁にこんな几帳面な細工を施す理由ってなんだろう、さっきの通路といい、ヴァルキュリアは螺旋に何か特別な執着でもあるのだろうか。
やがて通路が交差したり枝分かれしはじめ、ちょうど新しい通路を造っている”現場”を通りかかって、その疑問自体は解消した。
巨大なミミズともいうべき生物が、彼もしくは彼女が掘ってきたトンネルを、アマリリスが歩いている通路に接続させようとしていた。
トンネルの直径と同じ太さの長い環形をしたその生物は、
そうやって掘り続けられた、今や夥しい数の通路が接続する広い空間、さながら操車場のような場所に出た。
まず目を引いたのは、サイに似た大きな駄獣の数々、
頭上には6本の角と、上顎から突き出た長い牙を持つ獣や、頭よりも大きそうな、巨大な2本の角を戴いた獣が列をなして繋がれ、
周囲に立ち働く
駄獣の背には載荷用らしい、いくつもフックを並べた鞍が据え付けられており、金属の蔓を編んだような大きなバスケットをそのフックに引っ掛けて運搬するらしい。
バスケット自体は、素材の色合いや、編み方によって何種類かの製造元に由来するようではあったが、その容積や形状は統一された規格に従っているように見受けられた。
一方でその中身のほうは、バスケットごとにてんでバラバラで、
あるバスケットは、タイル?にしては色とりどりにも程がある、厚みもありすぎる、素材も分からない正六角形の板、
別のバスケットは、さっきのタイルに負けないくらい色とりどりのチューブを何十本も集めて作ったような玉房のようなもの、
或いは、金属の削り屑のようなものを直方体に突き固めた、金属タワシとも軽量ブロックともつかない物体、と言った有様で、
辛うじて用途がわかるのは、素材も色合いも様々、規格もまちまちのパイプと、
バスケットの材料とおぼしき、束ねられたワイヤぐらいだった。
そういった積荷を満載したバスケットを、
積み下ろされたバスケットは、運搬係の
別の
城砦内の運搬は
ということは、この巨獣たちは。。。
「城砦の外に行くの?」
「いかにも、領外貿易の隊商なり。
この六角猪の隊は
あの魁偉兎の隊は十三の野と谷を越えた旅団より参った。」
積み込みを終えた一隊、数珠つなぎにされた5頭の巨獣が、何かの風刺画のような風情でアンバランスに小柄な、
大人しいものだ。
いや、そこに感心するよりももっと重要なことがあった。
ここから外に出られるってことになる、、のか?
「・・・あの子一人でそんな長旅して、
途中で
「気遣いには及ばず、直通の隧道ゆえ。」
やっぱそうか、、それにしてもそんな長いトンネルを掘れるなんて。
人間の土木建築家を連れてきたら大興奮しそうだ。
最初に包囲されたときも、2回目の襲撃のときも神出鬼没だったのは、トンネルを使って移動していたからだろう。
それにしても、
「
「近隣の旅団とは領土を主とした利害の対立があれど、遠方の旅団であればかような軋轢を見るに及ばず。
私/我々は彼女らの、彼女らは私/我々の物産を重宝せし故、共通の利益に叶う由。」
「はぁ。。そんなとこまでニンゲンそっくりね、あんたら。」
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