第400話 交換条件って

表情はおっかなびっくり、しかし何やかや足取りはうきうきと去っていったアマリリスの背を見送り、

さて、とアマロックはマフタルの方に向き直った。

3人で一体だった少年は、その魂の3分の2を失ったように項垂うなだれていたが、その実、彼の気後れは別のところにあった。


「お前には、悪いことをしたな。」


アマロックの言葉に、少年はびっくりして顔を上げた。


「おれが出ていれば、あそこまで手荒なことは許さなかったんだが。

奴らにしてみれば当然、お前たちと共謀して反撃してくる危険のあるおれを、捕物に参加させるわけにはいかなかった。

チェルナリアの手に落ちるぐらいなら、という考えだったんだろうな。」


少年は皮肉な笑みを浮かべて首を横に振った。


「お互いさま。。。

僕らも、キミの忠告を聞かなかった。

チェルナリアの所には向かわず、、赤のジェーブシカを連れて、逃げるつもりだったんだ。」


「お前たちがそうするだろうということは分かっていた。」


「え゛!?」


アマロックはにやりと笑い、


「人間にはつぐないという言葉がある。

お互いさまにしては損害の勘定が合わないわけだし、ここはひとつ、お前に協力してやろう。

彼らの仇討ちを望むかね。」


マフタルは一考し、再びかぶりを振った。


「望まない。

そんなことをしてもバハールシタやバヒーバは帰ってこないし。」


「賢明だな。

では、彼らを取り戻す代わりに、お前が新しい友人を得る手助けというのはどうだ?」


アマロックの視線が動き、”ファべ子”に据えられた。

異族交流晩餐会のあと、自分たちの定位置にしている隅に引っ込んだ少女だったが、

食卓を共にして警戒心が薄らいだのか、マフタルの目にも先程までのような刺々しい空気は感じられなかった。


いや、だから違うんだよあれは、、みたいなことをあたふたと言いはじめたマフタルを無感動に遮って、アマロックが言った。


「代わりにと言っては何だが、ひとつ頼みがある。」


「いやいや、そっちから償いとか言っておいて交換条件って、

それで? 今度はなにすればいいわけ?」


孤独な少年は、懲りるということを知らないようだった。

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