第399話 沐浴階層にご案内

「あ゛ーー、もぅ、おなかいっぱーい。

10年分ぐらいのご馳走食べた気がするよ。」


5人がかりとはいえ、大皿料理を何皿も平らげて、アマリリスは身動きも億劫なほど満腹していた。

満悦、愉悦、ああ楽しい。まるで王侯貴族の気分だ。

さて次は何させてやろう。


あまり調子に乗りすぎると、ベラキュリアも流石にキレて、王侯貴族から奴隷身分に逆戻りという危険も考えられる。

とはいえ、魔族のことだし、遠慮しているうちにいつ気が変わって王様タイム閉店ガラガラ~、となってもおかしくはない。

そのへんの匙加減が難しい。


アマリリスは食べ過ぎで苦しくなったお腹を撫でながら思案した。

お腹を撫でなが、、うん、これはいけないわ、絶対美少女のあたしとしたことが。


「ぁんもう体ベトベト。

あたし、お風呂入りたい!

アマロック、頼んでみて。」


「仰せのままに。」


そばに控えていたベラキュリアの兵士にアマロックが何かを告げると、さっきと同じように一度下がって、

金属のボウルとタオルを捧げ持った兵士を2名連れて戻ってきた。


「然らば、赤の姫君を沐浴階層にご案内奉る。」


「お風呂あんの!?」


あからさまなムチャ振りのつもりで、せいぜいタライに湯を入れて持ってくれば御の字と思っていたアマリリスは、

なんとも滑稽な聞き返しをした。


「少々ご足労頂く距離なれど。」


「・・・」


尻込みとまでは言わないが、後ろ盾のアマロックから離されるのは少々心細いものがある。


「一緒に入るかい?」


「・・・ふふっ。バカ。」


その軽口に安心した様子で、アマリリスは肩に羽織ったオオカミの毛皮の尾をその背に揺らしながら、ベラキュリアの兵士についていった。

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