第378話 ラ・ペドレラ

一行はツンドラのなだらかな起伏を離れ、溶岩や噴石の作り出した峻険の間に踏み入れていった。

古代の爆発によって山体の半分が吹き飛ばされた山の残骸があり、その地下から押し上げられ、今も硫黄の煙を吹き上げる岩のドームのひとつの前で、ベラキュリアの一隊は整列した。



アマリリスは不思議そうに彼女たちの顔を見回し、そのガラスの瞳が一斉に見上げる視線の先を辿って――息を呑んだ。

突然、目の前に巨大な城砦が出現していた。


実際のところそれは降って湧いたわけではなく、ずっと手前から見えていたのだが、アマリリスのほうが建物であることに気づかなかったのだ。


それが周囲の山肌と同じ灰褐色の岩を組んで造られていたことも大きな理由だが、

それを差し置いてもその城砦は、アマリリスがこれまでに見たどんな建物とも似つかなかった。


壁、柱、床、階段やバルコニーといった構造が見分けられる一方、

人間が作った建物に見られるような共通性の一切がない。

壁は波打ち、傾いた柱はねじれ上がり、アマリリスには想像も及ばない力学で互いを支え合っていた。


もしおとぎ話のように、蒔けば家が生えてくるという魔法の種子があって、それを百年も放っておいて無秩序に成長させ続けたらこんな姿になるだろうか。

そんな想像もしたくなる形容だが、その全体を構成する、粗削りで形状も不規則ながら、運搬可能な大きさに切り分けられたブロックやスレートは、

その信じがたい構造物が、人間が建築物を作るのと同じような手順で部材を運び、積み上げて構築されたものであることを物語っていた。


脈打つ岩のファサードへと、藤の古木の幹のように捻じれあがった階段の先、行き止まりの岩壁にしか見えなかったものが、音もなくなめらかに擦り上がっていった。


ぽっかりと空いた暗がりから現れた武装兵が立ち並ぶ間を通って、帰還した兵団と捕虜たちは城内に吸い込まれていった。

岩の落とし戸が下がり、城砦は再び岩山の荒涼そのままの沈黙に包まれた。

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