第363話 母《ユク》とトヌペカ#2
{こんだけボロ負けなのに逃げないって、あいつら何なの?集団自殺の願望でもあるの?それとも単にバカなの?
どうして
なのでその問いは
{また昨日みたいなことになって、
それで傷口が広がるのを恐れているのよ。}
{かもしれないだけっしょ?
あんなこと、普通に考えて2日も続けて起こるわけない。}
#それは、どうかしらね、、、
{傷口も何も、もう広がりきってガバガバっしょ。
いまさら何を恐いもんか、
{・・・}
トヌペカの言うことは正しい、人間の視点からは。
説明が難しいのは、魔族はそのような考え方をしないということだ。
奇しくも、人型魔族であり、大規模な集団を作る、人間と極めて似て見えるヴァルキュリアで、その相違点の異様さが際立っていた。
{
祖神はどんな時でも、決まりきったことしか言わないの。
やられたらやりかえせ、一度転んだ穴には二度近づくな。}
{このままじゃ全滅って分かりきってるのに?}
{分かりきってるのに。
と言うよりも、そういうことを祖神は斟酌しないのよ。
超越の存在を持ち出すのは、首尾一貫した答えにはなるものの、全く不満足な説明であることは
祖神の意志だとしたら、その意志は誰が決めたものなのか。
そしてなぜ
しかし、時に明らかな破滅へと導く同じ祖神の声により、
人間ですら、少なくともトヌペカの群族には成し得なかった繁栄を築き上げてきたのだ。
そして、
祖神からのもうひとつの声に従い、彼女たちはすでに動き出していた。
人間の間では、幸運の女神には前髪しかない、と言い表される道理である。
{
トヌペカはそれこそ目を丸くして聞き返した。
{え、何で!? あいつが張本人っしょ?
自分たちはダメで、あいつ使うって、、さっぱわかんない、やっぱ
{こら。
それだけ切羽詰まってるってことでしょうけど。}
だが彼の信用度に対するトヌペカの評価には、彼女も同感だった。
人間、少なくとも彼女の群族は、そのような判断はしない。
堡塁や擁壁の上に、
やはり地下から移動して、次の砦に向かうのだろう。
トヌペカの母の任務はこれで終了だった。
{城砦に戻りましょう。
いいわよ、ユキヒツジに変身して、、}
一羽のワタリガラスが飛来し、近くのハイマツの茂みに舞い降りた。
大柄な鳥の重みでたわむ枝の上でバランスを取りながら、漆黒の嘴は天を指し、何かの運命を告げるかのように鋭く
#しまっ・・・
トヌペカの母が情勢の変化を察知したのと、峠の稜線に武装した黒い兵士の一団が姿を現したのはほぼ同時だった。
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