第343話 白昼夢魔

心身の灼けるような幸福感の一方、忌まわしい手触りでつきまとうものがあった。


アマロックとはぐれ、たった一人この荒野に取り残されるという考えは、目覚めて夢だと分かったあともその感触を拭い去れない悪い夢のように、アマリリスの心に暗いよどみとして残り続けた。

もしそうなったら、やはり高地ではぐれて行方知れずになってしまったというアマロックの父のように、

二度とアマロックと会えず、この荒野に死ぬまで一人ぼっち。


その悲しく残酷な考えは、死そのものよりずっと怖ろしく、

ぬくもりと幸せが増えるほどに、その考えの暗く冷たい感触はくっきりと、現実味を増すように考えられてならなかった。


そんなのは妄想だ、子どもみたいに空想に怯えているだけだと頭から追い出そうとするのだが、

時折地の底から突き上げてくる、唸りとも、恫喝とも、呼び声ともつかない轟きによって引き戻される。

地響きは日増しに強く執拗になり、やがてある日、地上のものとして出現したのだった。

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