第318話 真空式浸潤器
「おお、出来上がっておりますとも、
それはもう、最高の出来映えでして、、、」
応接セットの長椅子から身を起こしたクリプトメリアは、いつもより3割程度増しのむさ苦しさで、軽口にも精彩がない。
室内をきょろきょろ見回したアマリリスの目が、床の上に置かれた、大きなガラスの容器に止まった。
いかにも重そうなフタがされ、そのてっぺんに取り付けられた管が、隣のブンブン低い音で唸る機械に繋がっている。
中はいっぱいに、透明で淡い黄緑色をした液体が満たされ、そこにアマリリスの毛皮が浸かっているようだ。
クリプトメリアが機械のスイッチを切り、ガラス容器の天辺のコックをひねると、シュッと空気の漏れる音がして、容器の内側が曇った。
チューブを外し、ごつい両手で容器の縁を包むように掴んでしばらく、分厚いガラスのふたがゆっくりと動き始めた。
「これで完成だ。
十分に浸潤させておいたから、ムラはないし、この毛皮がぼろぼろになるまで使い込んでも、エリクサの効果は失われないはずだよ。」
「・・・一生ものってことね。
大事にするわ。」
湯気の立つ液体の中から引き上げられた毛皮を受け取り、アマリリスは服が濡れるのも構わず、ぎゅっと抱きしめた。
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