第317話 願望のかたち

その晩、アマリリスは夢を見た。

それは、おそらく彼女の願望をさまざまに妥協した形で投影したものであり――、


アマリリスは、戦争で生まれ故郷を追われ、ウィスタリアのどこかで暮らしている。

兄は、アムスデンジュン軍の銃剣で重傷を負ったが生き延びていて、

アマリリスと父は、兄の看病をしながら、葡萄を育てて暮らしている。

ヘリアンサスと、ファーベルが時々やってくる。


そんな夢だった。


アマリリスは目が覚めてもその夢を覚えていて、

その後長い間、あたたかい、しかし切ない感覚で記憶の中に残っていた。


夢を見るアマリリスを見ている人がいたら、その長い睫毛に縁取られたまぶたの間から、幾筋もの涙が流れ落ちるのを見ただろう。


しかし当のアマリリスは、目覚めて頬の辺りがごわごわする感じがしたものの、

自分が泣いていたことには最後まで気づかなかった。


冷たい水で顔を洗い、アマリリスは元気よく実験室に向かった。

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