第314話 魔族の本質#3
アマリリスは少し悲しい気分になった。
聞かない方が良かった、かもしれない。
時に不誠実に優しく、時に心ない言葉で彼女を傷つける、まるで考えの読めないアマロック。
人には慣れない獣、対話不能な荒野の生き物であるオオカミ。
アマリリスに分かるのは、頬に触れるアマロックの手の温かさ、
オオカミの毛皮のごわごわした手触り、それぐらいでしかない。
けれどそういった感触すらも、”本当の”アマロックではないのだ。
アマロックの正体は、生体旋律の奥深くに潜んでいて、アマリリスには決して触れることが出来ない。
アマロックの攻撃用の爪、
その禍々しい形がアマリリスは好きになれなかったが、ちょうどあんなものが、生体旋律の奥に黒くとぐろを巻き、冷たく動かない目でじっとこっちを見ている。
そしてこんな連想も、きっと人間ならではのことで、、
生体旋律そのものは、何も感じず何も考えない。
善良でもなければ、邪悪でも禍々しくもあり得ない。
優しくも冷酷でもなく、愛も憎しみも、喜びも苦悩も感じない。
それはむしろ、荒れ地に吹く風が砂の表面に描き出した紋様や、極寒の地で空気中の水分から織り上げられた氷の結晶といったものに近いのかも知れない。
自律的創出論というからくりのせいで、人間がそこに意味や目的を感じ取りやすいと言うだけで。
道理でうまくいかないわけだ。
自分の心に共鳴してくれる心を、アマロックの中に見つけようとしても、そこにアマロックはいないのだから。
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