第297話 銃と意地
思いつめ青ざめた顔で身支度をしているファーベルを、アマリリスは憂鬱な思いで眺めた。
「ねーー、、本当に一緒に来んの?
危ないからさ、ほら、
「だったらアマリリスも行くのやめようよぅ、
みんなでおうちで待ってよ?」
「ダメよそんなの、ほら、あたしは大丈夫だから、、」
「じゃ、わたしも行く!!」
しばらく黙って支度を進め、今度はファーベルから、
「ねぇ、、どうしても行くの?やっぱり、やめない?」
「だから、待ってていいってば」
「いやよそんなの、一人でなんて行かせない。」
ウザい、、とか思っちゃいけない。
ファーベルも一生懸命なのだから。
失敗した。
トイレのついでにでも、しれっと出掛けちゃえば良かった。
だが、アマリリスから宣言したのだ。
森に行きたいから行くと。
そんなことを言えば、こうなることは分かっていたようなものだが、ファーベルは最初反対して思いとどまらせようとし、
言っても聞かないと見て取ると(その判断は早かった)、一緒に行くと言い張った。
その意志の固さは、アマリリスの強引さと同じくらい、覆すのが難しかった。
ついでにヘリアンサスまでが同行すると言って聞かず、アマリリスを苛立たせた。
姉のもたらす迷惑を、ファーベルだけに負担させるわけにはいかない、とかほざく。
バカのくせにカッコつけてんじゃないわよ。
先に手慣れた装備を済ませて、アマリリスは玄関脇のベンチに腰かけ、ファーベルの様子を眺めていた。
神妙な、あるいは悲痛な、ともいえる表情で、ファーベルは最後の装備、6連発拳銃の弾丸込めをしていた。
それは二つの意味で気が重い場面であり、アマリリスがファーベルやヘリアンサスと一緒に森に行くことが少ないのも、ひとつにはこの拳銃が理由だった。
クマであれシカであれ、無論オオカミも、彼女の森の獣が銃で撃たれることは考えたくなかったし、
ファーベルが銃を使う、使わざるを得ない場面というのを想像するのも受け入れがたかった。
けれども今森に行こうとするのなら、ファーベルは是非とも銃を持って行くべきだろう。
そういう状況に追い込んでしまっているなら、やはりあたしが間違っているのかもしれない。
その考えは鋭い針の痛みのように、ちくりとアマリリスの胸を刺した。
けれどそこで考え直すという選択は、アマリリスにはなかった。
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