第294話 Never雌伏

「え゛え゛ーっ!!!?」


予想通り、いや、若干予想以上のアマリリスの抗議の迫力にクリプトメリアはたじろいだ。


オシヨロフ周辺の森に、人間を襲う危険な生物が入り込んだ。

ついては、駆除するまでの間、外出は控えるように、、

と言い終わるか終わらないかのうちのこの騒ぎだ。


「森に行くなって、どういうことですか!?」


「いや、だから、、、」


「アマロック達、もうすぐ高地に行っちゃうんだよ!?

少しでも一緒にいたかったのにぃ。」


クリプトメリアは別の焦りでファーベルの方にちらちらと目をやった。

アマリリス本人が何をどこまで考えて言っているのか知らないが、これではまるでラブラブ期のバカップルの言いぐさだ。

アマロックに釘を刺したところで、何の意味もない。


「絶対やだ!

やだやだNever!ダメだかんね、 絶対行く!!」


「だっ、ダメだよぉ、本当に危険な相手なんだ。

仕留めるまでの辛抱だから。。。」


「仕留めるまでって、いつ!?

何分後!?」


「いやいやいや、それは、、、」


「ファーベル、拳銃貸して。」


「えっ!」


「あたしが撃ち殺す。」


どうやら本気らしい言葉に、誰もが震え上がった。


「たのむからやめてくれ、魔族じゃなくて私が撃たれそうだ。」


ばぁん、とテーブルに両手を叩きつけ、アマリリスは席を蹴って、ペチカの前のソファーに身を投げた。


「。。。じゃぁ、行ってくる。

いずれにしても、明日の朝には一回帰ってくるよ。」


クリプトメリアはショットガンとライフルを両手に持って立ち上がった。


「気をつけてね。」


ファーベルが心配そうに声をかける。


「大丈夫だ。ありがとう。

お前たちも戸締まりに用心しなさい。」


アマリリスは黙ったままだった。



クリプトメリアは、アマリリスの扱い方がまるで分かっていなかった。


意に沿わないことでアマリリスを従わせたかったら、演技でも何でも、思いきり怒鳴りつけ、問答無用に押さえつけるべきなのだ。

それがアマリリスを怯えさせるだけの威力があってはじめて、彼女は言われたことの意味を考え始める。


つまり相手の本気度合いを尺度に対応を決めているのであり、反面、理性的な説得などは、聞こえていないのと一緒だった。

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