第263話 こんなことをして見せたからには

体が空気と同じ軽さになったみたいに、ふわりと浮く感覚があった。

アマロックに引っ張られながら、砂地にすとんと着地した。


「やったー。

ありがと、アマロック。」


軽快なステップのついでに、バレリーナのようにくるりと一回転して見せた。

スカートの裾が膝のまわりで、ブラウスが脇腹で揺れてアマリリスの肌を擦った。


こんなことをして見せたからには何かコメントを欲しい(でなきゃこっちがバカみたい)ものだが、アマロックは何も言わない。


「・・・」


いつもより、やけにアマロックにじろじろ見られる気がする。

それを意識して、アマリリスは少しどきどきした。


「・・・どうしたの?」


おずおずと訊ねると、予想だにしない一言。


「少し太ったかねぇ。」


「えっっ」


アマリリスは慌てて自分の体を見回した。


「冬の間、運動不足ぎみだったからなぁ。。。

そうかも。」


両手をウエストに当て、体の大きさを測ってみる。

特に太くなったような感じはしない。

それでいて外目に太って見えるとしたら、なんだかイヤだった。


「こことか」


アマロックの手がアマリリスの尻を撫で、というよりもわし掴みに握り、アマリリスは悲鳴をあげた。


「やだもー、えっち!!」


スナップを利かせてアマロックの手首を狙った右手は、しかしむなしく空を払った。


アマロックはげらげら笑いながら、臨海実験所の方へ歩いていった。

アマリリスはふくれっ面でその後を追った。

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