第258話 南の森の桜#1

森。。。

南の、、森。


“南の森の桜”



「はっ!!?」


アマリリスは寝入りばなを起こされた人のようにびっくりして、

周囲をきょろきょろ見回した。

頬をなでるそよ風、まだ雪の残る山並みの上に、ぽっかりとした青空。


えっ、何で!?あたしベッドに寝てたはずじゃ・


→ 何言ってんのよ、さっき朝ご飯食べて臨海実験所を出たじゃない。


☞ 嵐は止んで、ヘリアンと博士もとっくに帰ってきたわよ。😆


☆ 夢でも見てた?☺そうよこれが現実よ、思い出した?



まるで、頭の中に何人か小人がいるみたいに、てんでばらばらにいろいろな声が飛び交った。

心臓がばくばく鳴る胸に、そっと手を当てた。


そう、、確かに覚えている。


博士とヘリアンは大変だったらしい。

帰る途中で嵐になって、途中の入り江に船を入れて治まるのを待ち、翌朝になって戻ってきたのだ。

それが昨日の朝。

昨日は森に行ったものの、あちこちの川が増水していて渡れず、すぐに帰ってきてしまったのだった。


ちゃんと覚えてるじゃない。

でも、、

どうしちゃったんだろう、あたし。


本当に脳の病院とか行きたい。

どうしよう、手遅れです、なんて言われちゃったら。

っていうか、、ここどこ?


幻力マーヤーの森であることは間違いない。

広い谷に面した尾根で、結構見晴らしのいい場所だ。


海が見える右手側が東で、こっちが西、あの特徴的な形をした双子の山が、かなり北の方角に見えるから、

ここは、いつものアマリリスの行動範囲の中でも、だいぶ南寄りの場所。。。


“南の森”。


「・・・え?」



にわかに、髪を揺らして風が吹き抜け、視界をひらひらと、たくさんの白いものが舞っていった。

雪? いや、そんなわけない。


おそるおそる背後を振り返った。


大きく枝を広げた、一本の樹があった。

その枝の隅々まで、白く、淡い赤みを帯びた花によって、まるで煙るようだった。

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