第246話 まだ思い出さないの?

『遠い山岳の氷河に生まれ、広大な大地を私は旅する。

煙る花霞、天を覆う砂嵐、緑の沃野、山を砕く雷電。

流域にはかつて無数の国が生まれ、栄え、争い、滅びていった。。。』


大河の歌。

なぜそれを、人魚が。


・・・あれ?


ちょっと待てよ。。。。。。。。。。。



人魚の瞳を覗き込む。

黒曜石の瞳。

底知れぬ深海を見るような、、、


人魚が口を開いた。

鈴を転がすような発音の言語が、滑らかに出た。


『まだ思い出さないの?


リル。』



・・・・・・・・


!!!


それはまるで天啓のような鮮明さと稲妻のような衝撃で降ってきて、

アマリリスは全身の毛が逆立つのを感じ思わず飛び上がった。

けれど彼女が、その閃きが意味するものに考え到るよりも早く、本物の雷撃が彼女を打ち、アマリリスは流氷の上に叩きつけられた。


遠のく意識の中でアマリリスが見たものは、

忽然こつぜんと現れた塔の魔族に、人魚の少女が掴みあげられた光景だった。

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