第244話 何を待っているの?
「海へお帰り。」
自分の声の冷たさに少しびっくりしながら、アマリリスは魔族の少女に語りかけた。
「待っていても、お母さんは戻ってこないのよ。」
少女はふるふると首を横に振った。
おや、それくらいの意志疎通はできるのか。
言葉が通じないと分かっている相手に、
ただラフレシア語を使ったのは、彼女が理解してくれることを期待してではなく、母国語でそれを告げるのは、やはり忍びない気持ちが強かったからだ。
人魚の少女に、ここから立ち去る意志がないことは分かった。
ではどうしたらいいのか、アマリリスは分からなくなって黙ってしまった。
そもそもナンセンスなんだよ。
彼女に立ち去るつもりがあるなら、言われなくてもそうしているに決まってる。
そうじゃないってことは、ここに居たいからそうしているのだ。
魔族は、人間からの助言など求めてはいない。
単純なことだ。
ただ、、、
『おまえは、一体何を待っているの?』
ウィスタリア語の問いかけに、人魚の少女はやはりじっと、吸い込まれそうな瞳でアマリリスを見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます