第231話 因果交流電燈の明滅

何がいけなかったかな、、、

やっぱり魔族なんかとつるんでいるから、バチが当たったんだろうか。


いつの頃からかアマリリスは、自分の身にイヤなことがあると、それは何か超自然的な存在からの戒めではないかと考えて、

その因縁となった自分のよくない行いを探してみる、という思考が癖になっていた。


子供っぽい、迷信じみた考えというか、一種の空想の遊びだとは自分でも分かっていて、

そうやって考えることは、まず考えごとそのものによって苦痛が紛れ、同時に、現在の因果をすでに覆すことの出来ない過去に求めることで、諦めがついて受け入れやすくなるからだった。


なおこの考えとの裏返しで、幸せはその後に続く不幸の予兆ではないかと疑う図式の思考もあった。

どちらも人には話したことのない考えで、特に後者はアマリリス自身からしてそういう思考が自分にあることに、気づいていなかった。


さて今回は何の因果応報だろう。


魔族とかオオカミとか、邪悪な獣とばかり付き合ってるから?

でもお陰で、サンスポットや、アフロジオンとも仲良くなれたのだ。

その報いというなら望むところだぜ。


ヘリアンサスに意地悪ばかり言ってるから?

でもいいじゃない、ヘリアンには可愛いファーベルがいて、仲良くよろしくやってるんだから。

あたしが恨まれる筋合いないわよ。



やっぱりあれかな。。。

お父さんが、呼んでいるのかな。


トワトワトに着いた時にはもういなかった父。

最後にどんな表情で、どんな言葉を交わして別れたのか、

いつ頃からいなくなっていたのか、もう思い出せなくて、、、



あたし何だか、ヘンなこと考えてる?



こうして父のことを考えるのも、ずいぶん久しぶり。

何とも薄情な話だ。

春にちょっと探したきり消息の分からない、あの氷の海の底に沈んでいるのかも知れない、

かけがえのない父を忘れて、よく平気でいられるもんだ。


自責の念に酔って、アマリリスの目に涙が滲んだ。

枕に顔を埋め、静かに嗚咽した。


『大丈夫』


アマリリスのうなじを撫でながら、語りかける声があった。


『お前が思い出さないときも、私はいつも側にいる。

私を記憶する、お前の中に生きている。


ベルファトラバ海に、私は沈んでいないよ。』


本当にそうだったらいい。

もう会えなくても、きっとどこかで生きていると考える方がずっといい。

でも、


『それなら、ベルファトラバ海には誰が沈んでいるの?』


答えがない。

そしていつの間にか、アマリリスの髪を撫でるのは、父ではなくアマロックに替わっていた。


『ねぇ、誰が沈んでいるの?』


『さあ。人魚に聞いてみたかい?』


目が覚めると、当然ながら父もアマロックもおらず、アマリリスはがらんとした寝室にひとり横たわっていた。

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