第203話 恐れと羞恥と温もりと、、

数十分後、水を吸った毛皮服はかちこちに凍りつき、はがれた樹木の皮のようになっていた。

アマリリスはそれらを脱ぎ捨て、アマロックの膝の中に収まっていた。


川から少し上がった斜面の、ダケカンバの大木の根元に掘られた雪洞の中。

アマロックの毛皮外套の内側にくるまれて、パンツもキャミも脱いだすっぽんぽん。


ぐわっ、と血圧が上がった。


仕方ないといえば仕方ない。

氷のような川に落ちて、そのままだったらあっという間に凍え死んでいただろう。


だからといってどうしてあたしは、何のためらいもなく素っ裸になって、しかも今初めてそれに気づいたような気分になってるんだろう。


自分自身に引く。バッカじゃないの!?

恐くてアマロックの顔が見れない。

火が出るほど恥ずかしいけれど、、でも、ふれあう素肌はあたたかい。


アマロックも裸、

ただしこちらはもちろん、川に落ちたわけではない。

自ら望んでずぶ濡れになった愚か者を、彼自身の体温で暖めてくれているのだ。

それもまた恥ずかしい。


細く見えるアマロックだが、胸板も腹筋も盛り上がり、鋼のように硬い。

そこに寄り添うのは落ち着く。


恐ろしくて、恥ずかしくて、あたたかくて、幸せな気分。



足先がちょっと冷たい。

もぞもぞしてたら、アマロックは黙って脚をずらし、折り曲げた膝の内側に挟みこんでくれた。


キスしてほしい。

そう思ったら、心がわかるみたいに、とても優しいキスをしてくれた。


どうしよう。。

もしこのまま・やさしく押し倒されたら、拒める気がしない。

ていうか、全然イヤじゃない。


このままされちゃうの?

昔、、あれほどあたしのことを愛してると言ってくれた、アザレア市のカレシには、求められても頑なに拒み、キスすらさせなかったのに、

もののついでみたいに人の唇を奪っていったケダモノに、なにもかもあげちゃうの??

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る