第187話 耳先と目鼻#3

まさか、、最初からこれが狙い?

ヤマネコがウサギを襲うのをじっと待っていたのも、その前、やたらぐずぐず歩き回ってたのも、、

あれはオオヤマネコの後をつけてたの?


「えぇーー・・・」


アフロジオンとサンスポットが、挟み撃ちの形でオオヤマネコに迫る。


トワトワト最大のネコ科動物とはいえ、オオカミ2頭にはかなわない。

かといって、結構な重さのあるウサギをくわえたまま逃げるのも不可能だ。


ヤマネコは慌ててウサギを放り出し、一目散に逃げていった。

オオカミ2頭は、あっさり獲物をゲット。

実に一週間ぶりの獲物だ。


しかし、、、


「やだもぉー・・・」


セコい。

セコすぎる、ヤマネコのおこぼれをアテにするオオカミってどうなのよ???

アマリリスはひとり赤面し、せっかくの獲物を横取りされたヤマネコに対して、身内の恥を心底から詫びた。


アマリリスの気も知らず、アフロジオンとサンスポットは雪の上に転がっているウサギに飛びついて、真っ二つに引き裂き、その場でがつがつと平らげてしまった。

文字通りあっという間のできごとだ。

食べ終わると、やがて2頭もばらばらにどこかに去ってゆき、あとには白い雪の上、うす赤い血の染みが小さく残っているだけだった。


何もなくなってしまうと、哀れなウサギを悼む気持ちも、横取りされたヤマネコへの申し訳なさも、

浅ましいオオカミたちをとっちめてやりたい思いも、なんだか薄らいでどこかに行ってしまった。


食べ物を手に入れたとき、アフロジオンが体格にものを言わせて独り占めにするのではないかと心配だった

けれどさっきはそんなこともなく、2頭の間で、オオカミなりに公正なやり方で分配されたように見えた。

あの横暴なアフロジオンも、結構いいところがある。

これなら、群の未来も真っ暗闇ではないかもしれない。


一筋の晴れ間が見えたような気がする一方、重苦しい暗雲の本体は、依然として居座ったままだった。

今日得たウサギがとても貴重な食事だったのは確かだ。

けれどそれも、大食漢のオオカミにはほんんのオヤツがわり、糊口をしのぐという程度にしかならない。

やはり小動物じゃダメなんだ、シカがやってきてくれないことには。。。


最近の出来事で、すっかりネガティブ思考が染みついて、暗い気分でしばらく突っ立っていた。

もう何も起こらないだろうと思って眺めていた斜面に、思いもよらない姿が現れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る