第181話 よすが

帰り道、アマロックがいた。

実験所に行っていて、森へ帰るところなんだろう。


「やぁ、バーリシュナ。」


挨拶には応えず、アマリリスずんずん坂を下っていった。

アマロックは脇に避けて、一直線に進んでくる相手に道を譲った。


まだ、心の中のわだかまりが完全に消えたわけではなかった。

だから、これはアマロックから誘ったんだと自分に言い聞かせながら、

アマリリスは明らかに進行方向を変え、アマロックの胸に突っ込んでいった。


オオカミたちの運命に関する暗い予感、焦り、吹雪ヴェーチェルの恐怖、一日中雪の森を歩くことそのものの疲労、

いろいろなものがぐちゃぐちゃになって、身も心もボロボロだった。

何でもいいから癒してくれるものが必要だった。

心のよすがとして。


目を閉じれば、瞼の間から涙が滲み出てくる。

気づかれないように、アマロックの肩に顔を埋めてこすりつけた。


アマロックは何も言わず、アマリリスの背を抱いてくれていた。

ただ、分厚い毛皮服を着ているせいで、その抱擁はちゃんと体に伝わらず、何だか中途半端でもどかしい。

毛皮服を脱いで、もっとぎゅっと抱きしめてほしい、と思った。

もっとも、、、毛皮服の下には、下着一枚しか着ていないんだから、(色んな意味で)できっこないけれど。


アマリリスはどちらかと言えば不満の残る気持ちで、溜め息をついてアマロックの胸を離れ、坂を下っていった。

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