第147話 夢見るサンベリーナ#2

いくらお天気とはいえ、寝巻で外に出たのは大馬鹿だった。

イルメンスルトネリコから戻ってくる間じゅう、一刻も早くペチカの火にあたることだけを考えてふるえをこらえ、

ようやく実験所に戻ると、居間の方から、ファーベルが楽しそうにはしゃぐ声がする。


アマロック💢



ひどく腹が立って、そしてなぜか悲しくて、居間の前を素通りし、実験棟に向かった。


オルガンの前を通ると、博士が何かまたよく分からないことを言ってるけど、今はそれどころじゃあない。

ストーブまで直行し、ようやく人心地ついた。

ああ幸せ。



昨日までの疲れがまだ取れてないのか、逆に寝過ぎか、なんだか眠い。頭がぼんやりする。

オルガンが鳴りはじめた。

生体旋律、それもずいぶんゴツい感じの曲だ。

ヒグマの旋律か何かだろうか。


耳を傾けることしばらく、

ストーブで暖まったのはいいが、今度は至近距離で高熱にさらされ過ぎて、すっかりのぼせてしまったことに気づいた。

これはいけない、そのうち美少女の丸焼きになってしまう。

アマリリスは大きく伸びをしながら起き上がり、火照った頬に軽く両手を触れた。


クリプトメリアはこちらに背を向けているが、満足そうに腕組みして、オルガンに聞き入っている様子だ。

そういや、博士に聞きたいことがあるんだった。


側に立ってみると、割とすぐに気付いてくれた。

話は聞いてくれそうな様子だが、やけに妙に取り澄ました顔をしていてちょっとキモい。

何だろね? まあいいけど。


「・・・、」


話を切り出しかけて、アマリリスは困ってしまった。

昨日までのことを、どこまで、何から話せばいい??

ヴィーヴル、キュムロニバス、グナチア、、、

思い返しただけで、途方もなさにため息が出た。

いいや、聞きたかった肝心かんじんのことだけ。


「・・・魔族の、言葉。。?」


「む?」


「魔族の言葉は、人間には理解出来ないって、前に言ってたじゃないですか。

あれ、どうしてなんですか?」


「・・・」


クリプトメリアは、真剣に考え込むときの顔をしている。

やっぱり今日ちょっとヘンだ。


「博士?」


「む?

・・・おお、失礼。


魔族の言語を人間が理解できないのは何故か、とな。。


それは、彼らの言語が、正確には言語ではないからなのだ。

人間が、他者の精神、人格そのものを知覚に捉えることが不可能なのと同じ理由で、人間は、魔族と会話することができない。」

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