第146話 夢見るサンベリーナ#1

正直なところ、アマリリスがいること自体忘れていた。

彼女の顔を仰ぎ見て、クリプトメリアは心底ギクリとした。


それが、アマリリスに見出そうとは、まだ思っていなかった表情だからだった。



心の揺らぎを映すかのように潤んだ瞳、夢見るまなざし。

内から発する熱に火照り、上気した頬。

何か言いたげに、その一方で言葉にするのを躊躇ためらっているような、バラ色の唇。


この少女と同じ性別に属する人種、ただし彼女よりももう少し年齢のいった個体が見せる、

これとよく似た表情を、クリプトメリアは過去何度も見てきた。


そして残念なことに、彼女たちの情熱的な目差しは決まって彼を素通りして、より幸運な男の上に据えられ、

そうなると、もはや他のものは何も目に入らず、喋りかけても耳に届かず。。。


しかし今、アマリリスの吸い込まれるようなみどりの瞳は、じっと彼に注がれ、

クリプトメリアは平静を装った面の皮の下でどぎまぎしていた。

そしてすぐさま自分自身を叱り飛ばした。

全くいい年をして、しかもこんな小娘相手に、何をとち狂ったカン違いを。

お前のわけがないだろうが。


この世界の果てで、アマリリスが熱をあげるとすれば、それは。。。



アマリリスがふっと目を伏せ、低く息を吐いた。

夢見る乙女の煩悶はんもんのため息、とも受け取れるし、苦悩の呻きのようにも聞こえた。


固唾かたずを飲んで、クリプトメリアはアマリリスの言葉を待った。

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