第137話 前代未聞のこと

尾根を下って行くと、彼女を探しに来ていたヘリアンサス、ファーベル、クリプトメリアに出くわし、

この時ばかりは、顔を見るなりこっぴどく叱られた。

それも意外にも、ファーベルに。


「いったいどこ行ってたのよ!!

3泊4日も森の中でッ!!?」


「・・・」


「なんとか言いなさいよ!!

みんなどんだけ心配したと思ってんの!!!」


普段は怒るということのないファーベルの、真正面からの猛攻撃にアマリリスは震えあがり、

しょげかえった声で、山奥でアマロックとキャンプしてました、、と正直に答えた。


ファーベルは一瞬言葉に詰まり、それから前よりは語気を緩めた、けれど依然手厳しい調子で言った。


「出掛けるなら、そう言ってよ。

アマリリスが森が好きなのは分かったから、行っちゃダメとかもう言わないから。

でも、ヘリアンくんだって死ぬほど心配してたんだよ!?

ダメだよ、そんなの。」


当のヘリアンサスは、怒っているというよりは、この場の空気のいたたまれなさに、ぶっきらぼうに沈黙している。

クリプトメリアは、まぁまぁ、無事でよかったじゃないか、とか何とか取り繕おうとしている。


アマリリスはしどろもどろのかすれた声でファーベルに謝って許しを請い、今後無断でこのようなことはしないと約束した。


「ファーベルが正しいわ、本当にごめん。」


ヘリアンサスは目を丸くした。

この問題児の姉が、人に怒られて素直に非を認めるなど、前代未聞のことだったのだ。

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